保坂和志
(ホサカ カズシ)
略歴
1956年、山梨生まれ。早大政経卒。小説家。1990年、デビュー作『プレーンソング』を群像に発表する。なにごともなく時間が過ぎていくことの充実をとらえた作風は吉田健一を思わせる。哲学的な思索を手にとどく言葉で定着しようという試みも吉田健一ゆずりかもしれない。1995年、「この人の閾(いき)」で芥川賞。1997年、『季節の記憶』で谷崎賞。
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作品
『プレーンソング』
猫好きになった青年のアパートに、友人がつぎつぎと転がりこんできて、共同生活がはじまる。事件らしい事件はなにも起きないが、読んでいると無性に楽しくなる。『草の上の朝食』と合本で講談社文庫。
『草の上の朝食』
『プレーンソング』の続編。主人公はひきつづき友人たちを居候させていて、あいかわらず猫と競馬の日々をおくっているが、行きつけの喫茶店の女の子と恋をする。今回もなにも起きないが、幸福な時間がながれる手ごたえはいよいよ確か。野間文芸新人賞受賞。『プレーンソング』と合本で講談社文庫。
『猫に時間の流れる』
表題作は同じマンションに住む猫好きの仲間が、猫エイズにふりまわされる。「キャット・ナップ」は病院に集まる猫に不妊手術を受けさせようと右往左往する。猫好きとはこういうものかと納得する。
『この人の閾(イキ)』
表題作は仕事のあき時間に、今は結婚して母親になっている昔の女友達の家に遊びにいき、おしゃべりをしてくるという話。「夏の終わりの林の中」は離婚した女友達と目黒の自然教育園を歩く。「夢のあと」は鎌倉育ちの友人に鎌倉を案内してもらう話で、短編だが濃厚な時間が流れている。
『季節の記憶』
(C) 2000 Kato Koiti