室井光広
(ムロイ ミツヒロ)
略歴
1955年、福島県生まれ。慶大文学部卒。小説家、文芸批評家。「零の力 ──J.L.ボルヘスをめぐる断章」で群像新人文学賞(評論部門)受賞。1994年、「おどるでく」で芥川賞受賞。方言とユーモラスなぼやきでくるんでいるが、本質は知的で実験的な作家である。
→ 「作家と語る」
作品
『猫又拾遺』 1994年 4月 立風書房
表題作は山深い寒村に根をおろした一家の歴史を幻想的に描いた年代記で、「おどるでく」とならぶ傑作。「あんにゃ」は義理の妹の語る半端にしか生きられなかった男の一生で、方言によって無意識までまるごと掬いあげようという手法の萌芽が見られる。「かなしがりや」は作者の分身とおぼしい人物を主人公とするシリーズの第一作で、方言を測深鉛とする手法の確立が見られる。
『おどるでく』 1994年 6月 講談社
表題作は生家の屋根裏から見つかったロシア文字日記を触媒に、青春時代を諧謔をこめて語る傑作。芥川賞受賞。「大字哀野」は、郷里の寒村に赴任してきたユダヤ人と中国人の混血の医師をめぐる物語で、表題作の背景が描かれる。
『そして考』 1994年 9月 文藝春秋社
表題作は一旗町という東京西郊の町を舞台に、会津の地から最澄を論争で追いつめた徳一の事蹟を語る。「ヴゼット石」は占星術と英語の参考書というまったく傾向のことなる本を同時にだそうという計画を軸に、近代日本の歴史をたどる。
『零の力』 1996年 3月 講談社
ボルヘスを論じた表題作、三島由紀夫の周辺を連想で旅した「木乃伊取り」、エズラ・パウンドを賛える「霊の力」、初期小林秀雄に思いをはせる「批評家失格ということ」、ジョイスをめぐって映画論にまでひろがってい「声とエコーの果て」の五篇をあつめた評論集。いずれも興味深い論考だが、特に「声とエコーの果て」は傑作。
『6b.htm#R96028">縄文の記憶』 1996年 8月 紀伊国屋
東北にうまれた著者が土偶や仮面をもとにくりひろげる縄文文化論。
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