TRONの今──坂村研究室訪問記



加藤弘一


 1996年9月2日、文藝家協会電子メディア特別委員会の吉目木晴彦伊井直行の両氏とともに、TRON計画のプロジェクト・リーダー、坂村健氏を東大の総合研究博物館内にある氏の研究室に訪ねました。

 今、ネットワーク社会がいやもおうもなくはじまろうとしていますが、人名や地名、歴史的な固有名詞に使われているが、文字コードとして規格化されていない漢字や異体字が消されてしまうという問題が持ち上がっています。現在はJIS規格にない文字はユーザーが私用の文字(外字)を個々につくることでしのいでいますが、ネットワーク社会では外字は存在する余地がありません。戸籍の表記ですら、情報処理にのせられないのなら書き換えてしまえという議論が一部でおこなわれているほどですが、われわれ文学にかかわる者にとっても、これは大問題です。

 文字が消されるという問題に直面しているのは文学関係者だけではありません。実は、東大の人文科学系の研究者たちも数年前から同じ問題にぶつかり、TRON計画の坂村氏とともに共同研究をおこない、解決策を模索していたのです。



日本発のコンピュータ規格


 TRONと聞いても、忘れてしまった人が大半でしょうし、おぼえていても「昔、そういうのがあったなぁ」ぐらいでしょうか。パソコン関係者のなかには、TRONはとっくに終わったと考えている人が多いようです。

 TRONは過去のしがらみを一度ご破算にし、日本の技術でコンピュータの規格を1からつくりなおし、世界にむけて提案しようというプロジェクトです。もともとは家電製品や工作機械、工業製品にくみこむためのマイクロコンピュータの基本ソフト(OS)の規格をつくろうという計画で、この分野(Industrial TRON、略してITRONといいます)では、1984年に仕様が決まり、以後、着々と地歩をかため、現在、事実上の世界的な標準規格になっています。裏方的存在なので気がついている人はあまりいませんが、TVも冷蔵庫もクラーも炊飯器もエレベータも自動車も、いつの間にかほとんどがITRONという約束で動いているのです。日本のハイテク製品の屋台骨はITRONによってささえられているといっても過言ではありません。

 坂村氏の非凡なところは、TRONを機械組みこみ用のITRONで終わらせず、パソコンにあたるBTRON、通信回線用の CTRON、TRON-OSがもっとも動きやすいように設計したマイクロコンピュータである TRONチップ(Gmicroシリーズ)、全世界の文字をすべてとりこんだ文字コード体系であるTRONコード、人の手の大きさや動きの特性にあわせて設計したTRONキーボードなど、さまざまな分野の規格をふくんだ総合プロジェクトとして構想したことでした。

 1986年にパソコンにあたるBTRONが、技術家庭科で子供たちにおしえる教育用コンピュータの標準になるという話がもちあがり、にわかに脚光をあびましたが、アメリカ通商代表部がコンピュータ分野に非関税障壁をつくろうとしていると強硬な抗議をおこなった結果、教育用コンピュータの標準化は白紙にもどされました。BTRONの仕様は 1988年に出来上がったものの、開発は遅れ、話題にのぼることもまれになりました。

 10年前、TRONを「日の丸コンピュータ」と呼び、アメリカのコンピュータ支配をくつがえす切り札と期待する人々がいましたが、これは誤解でしょう。TRONはもともと全世界に向けて考えられた規格です。もちろん、アメリカのメーカーにも門戸が開かれており、現にタンデム社では CTRON準拠の OSを製品化していますし、サンマイクロシステムズ社は、自社のRISCチップの上で動くITRONを販売しているということです(1997年には ITRONベースのJavaOSである JBlendも誕生)。

 文字の規格であるTRONコードも、1987年の段階から、65536字(16bit)の枠を切り替える方式で、諸橋大漢和をもとに約5万字はもとより同じ漢字でもそれぞれの国で別々に発達したため形が異なっている中国、韓国・朝鮮、ベトナムの漢字、そして世界のあらゆる文字を混在して使える枠組みを提唱していたということです。

 もし、TRONプロジェクトが当初の予定通り進行していたら、Unicodeの生まれる前にTRONコードが世界に向けて提案されていたことになり、漢字のユニフィケーションなどという問題がおこることもなかったでしょう。なんとも残念です。



BTRONの復活

 一口にTRONといっても、ITRONのように成功したものもあれば、TRONチップのようにコマーシャルベースでうまく成功しなかったものもありますが(CTRONベースの電話交換機用CPUとして、一定の需要はあるようです)、われわれ文筆を業とする者が直接関係するのは、TRONコードとBTRONです。

 TRONコードはともかく、なぜBTRONがと疑問に思う人もいるかもしれません。TRONコードは来年夏ごろには(この原稿を書いた時点では1997年夏ということだったが、1998年2月段階でも発表のめどがたっていない)第一期分が完成し、フォント(字形データ)もそろうということですが、いくらTRONコードが制定されても、われわれ一般ユーザーが使えるのでなくては、あまり意味がありません。BTRONは TRONチップを使った専用機(G-Cube)で動くタイプと、Dos/V機(正式にはOADG機)で動くタイプの二種類がありますが、安価でありふれたDos/V機でも動くという点が重要なのです。

 BTRONは、現在のところ、JIS第1・第2水準および補助漢字の約13000字が特別な知識や操作なしに使える唯一の環境だという点でも注目に値します(Windowsや Macintoshではいちいち外字登録しなければならず、他のマシンにデータをもっていくにも複雑な手続きが必要です。Linuxをはじめとする Unix系の環境では補助漢字を使えないことはないですが、高度な専門知識が必要です)。もっとも、いくら他のパソコンでは使えない文字が使えるといっても、使い勝手が悪くては話になりませんが。

 われわれの訪問の目的は、TRONコードが本当にわれわれの期待にこたえてくれるのかを確認するとともに、BTRONの実物にさわらせてもらい、Windowsや Macitoshとくらべて使い勝手がどうかを確認することにありました。



電脳要塞

 坂村教授室は、昨年(1995年)、完成したばかりの「東京大学総合研究博物館」の中にあります。ここは明治初年以来、東大が収集してきた資料を展示するためにつくられた国立大学としては最初の付属博物館だそうで、一階は一般に開放された展示室ですが、二階から上は研究室になっています。

 はじめ、理学系の教授のはずの坂村氏がなぜ博物館にいるのか不思議に思いました。坂村教授室のある階でエレベータをおりると、またまたびっくりです。廊下には古生物関係の研究室がずらりとならんでいるではありませんか。他の階には文化人類学や考古学、歴史学の研究室まであるそうで、ますます首をひねりました。

 あとでわかったのですが、ここは博物館とはいっても、ガラスケースの向こうに文化財をならべておくだけの展示場ではなく、未来指向のディジタル・ミュージアムで、最新のTRON技術で武装した電脳要塞とでもいうべき建物だったのです。9月10日からは開館記念特別展示として「歴史の文字−記載・活字・活版」展が開かれるということです(10月13日まで。入場無料)。

 文化人類学や考古学、歴史学の先生方が研究室をおいているのも、大きな意味がありました。コンピュータ化とネットワーク化の進行によって、人文科学系の研究者はいま窮地におちいっているというのです。自分が研究対象としている文献の文字が記録できないというのは、確かに研究者にとっては死活問題でしょう。この学際的な博物館は、人類が使ってきたすべての文字をコンピュータで使えるようにするというTRONコードの共同研究には、かっこうの場だったのです。



古文書リーダー

 坂村教授室は畳20畳分くらいはある広い部屋でしたが、みごとなくらいなにもありませんでした。入って左にTRON関係の本がならんだ隙間だらけの本棚がひとつ、右に応接セットと21インチのモニター、その横にTRONキーボードをつないだフルタワーのパソコン、奥にノート型パソコンののったデスクがおかれているだけで、あとはなにもなし。こういう研究室ははじめて見ました。

 われわれの訪問の経緯を吉目木氏の方から説明すると、坂村氏はすぐに壁際のフルタワーのマシンの電源を入れ、BTRONのデモをはじめました。最初に立ちあげたのは古文書リーダーというソフトで、木版本の『雨月物語』の白峯のくだりが画像で表示されています。画像で表示するくらいはどのパソコンでもできますが、「活字」というアイコンをクリックすると、瞬間的に(本当に瞬間的に)別ウィンドウが開き、木版本を活字化したテキストが表示されています。そこには「あきこしやま」の「あき」(火にノギ)をはじめとする普通のパソコンでは表示できない文字があたりまえに表示されていました。

 この程度は予想していましたが(そのために訪問したのです)、思いがけなかったのはクリックひとつで漢字のルビ(振り仮名)が出たり消えたりすることです。しかも、BTRONの文書ははじめから漢字の裏側にルビのデータを書きこめるようにできており、仮名漢字変換をする際、漢字になる前の「読み」がルビとして自動的に入力されるのだそうです。当然、文章の一部を切り張りしても、ルビのデータもいっしょに移動するわけです。

 既成のワープロにもルビをふれるものがありますが、あくまで文字装飾の一部という扱いなので、あとからわざわざ位置を指定して入力しなければなりませんし、ルビをふった箇所を切り張りしようとするといろいろめんどうなことがおこってきます。まして、他のソフトにルビごとデータを移したり、ネットワークで送るなどできるはずがありません。

 ルビ機能は確かにありがたいですが、古文書リーダーやワープロにつけるならともかく、BTRON自体に標準で組みこんだのは、過剰品質のような印象がなくはありません。個々のソフトでなくBTRONの方でもっていると、表計算ソフトやデータベースソフトなど、BTRON上で動くあらゆるソフトでルビが使えるわけですが、そこまでする必要があるのだろうか? この点を質問したところ、意外な答えが返ってきました。ルビは視覚障害をもった人のためだというのです。



イネーブルウェアとしてのルビ

 パソコン通信歴の長い人はご存知と思いますが、障害をもっている人のなかには、パソコンを使いこなし、通信に参加している方がすくなくないのです。現在のパソコンは健常者にとっても使いやすいとはいえず、障害者にはなおさらでしょう。IBMなど、一部のメーカーでは障害をもっている人を支援するオプション(イネーブルウェアといいます)を用意していますが、BTRONの場合、最初からイネーブルウェアの機能を組みこんであるというのです。

 視覚障害をもった人の場合、音声合成用のソフトウェアを組みこみ、文書内容をパソコンに読み上げさせることで使えるようになるのですが、ここで問題になるのは漢字の読みの問題です。音声合成ソフトには一応辞書がついているそうですが、特殊な読み方の漢字や珍しい固有名詞の場合、音読みの羅列になってしまいます。「吉目木」という姓だと「キチモクボク」というように。視覚障害者は音読みの羅列をカンと経験で、「これは人名らしいな」とか、「地名だろうか?」と類推するということです(これは点字リーダーという出力装置でも同じです)。

 漢字の多い文章や、変わった固有名詞のたくさん出てくる書は何度も聞き直さなければならないという苦労話を、以前、あるネットで読んだことがありますが、そういう困難があっても、パソコン通信は交友が広がるので、なにものにも変えられないということでした。

 BTRONのように、最初からルビ機能が組みこまれていれば、漢字の読みの問題はあっさり解決するわけです。しかも、表計算ソフトなどでも使えるわけですから、視覚障害をもった人のパソコンの用途がぐんと広がることになります。



驚異の軽さ


 古文書リーダー以外にも地図など、いくつかのソフトを見せてもらいましたが、起動の早さ、動作の軽快さは、Windows95や Macitoshのもたもたした動作になれた身には新鮮でした。筆者の場合、TRONWAREについてきた体験版をフロッピー・ベースで動かしていたので、BTRONが軽快なことはある程度わかっていたのですが、ハードディスクで動かすともう一段スピードアップします(特に新ウィンドウの立ち上がり)。

 あまりにも速いので、ひょっとしたら、TRONチップを使ったマシンなのかとうかがったところ、Dos/V機で、しかも 100MHzの 486DX4に RAMが 10Mbytesだというのです。いやはや。

 Dos/V機の購入を考えたことのある方ならおわかりでしょうが、これは Windows95がかろうじて動く、一時代前のマシンです。6月ごろ、秋葉原の裏通りではこのクラスの売れ残りマシンが 5万円くらいで投げ売りされていましたし、安物部品を寄せ集めてつくった筆者のマシンよりも貧弱です。

 坂村氏によれば、BTRONは 4Mbytesでも十分だが、それでは比較のための Windows95が動かないので、10Mbytes積んでいるということでした。はたして、つぎに立ちあげた Windows95はおなじみのノロノロ動作でした。意地の悪い比較といえばいえないことはないですが、Windows95がいかに物量を要求する重厚長大OSか再確認しました。

 公正をたもつために書きそえますが、マイクロソフトのプログラマーがBTRONをつくった日本人プログラマーより劣っているということではないでしょう。Windows95は三つのOSを無理やりひとつにしてあるという面があるのです。乱暴なたとえですが、新幹線に蒸気機関車とディーゼル機関車を連結して走らせているようなものかもしれません。過去のソフトウェアの動作を保証するためには、こういう無茶なことをやらなければならないのに対し、BTRONは過去のしがらみがいっさいないので、新幹線を新幹線のまま走らせることができるのです。マイクロソフトはライバル会社の優秀な人材をつぎつぎと引き抜き、いまや世界一の頭脳集団となっていますが、その世界最高の人材を動員してさえ、Windows95のような製品しかつくれないところに、マイクロソフトのおちいったアポリアがあるでしょう。



これからのTRON

 これからのTRONについて坂村氏にうかがったところ、
「今まではビジョン先行型のアピールをしてきましたが、これからはTRONなら、現時点でもこれだけできるんだということを強調していこうと思っています」
という答えがかえってきました。以前、世の注目をあつめた時のTRONにはビジョンしかなかったわけですが、十年間の雌伏をへて、ようやく誇るべき成果が蓄積されたということかもしれません。

 実際、今年(1996年)中に、セイコー電子工業(現セイコーインスツルメンツ)からTiPOというBTRONベースの PDA(シャープの ZAURUSやアップルの Newtonのような高級電子手帳)が発売されるということです。補助漢字が標準で使える点をセールスポイントにするようです。

 現行のBTRONには「基本エディタ」という、「書く」機能に特化したワープロのようなソフトがついてきます。一太郎や Wordといった既成のワープロは、多機能化競争に走った結果、印刷や装飾などの末梢的な機能がふくれあがり、わかりにくくなっただけでなく、動作が重くなっています。ワープロだけでレイアウトに工夫をこらした印刷物がつくれるのはセールスポイントになるでしょうが、「書く」ことを仕事にしている人間にとっては、ありがた迷惑です。

 次のバージョンの BTRONでは、基本エディタもさらに機能アップがはかられるわけですが、既成ワープロのような末梢的な機能を増やす方向ではなく(印刷機能の充実は専用のソフトや出力センター向けのソフトにまかせる)、あくまでも「書く」機能にみがきをかけていくということです。文章のプロである作家の意見を聞きながら、本当の意味で原稿を書きやすいソフトに仕上げていくことも考えているそうなので、水ぶくれした重厚長大ワープロを押しつけられているわれわれユーザーにとっては朗報といえましょう。

 TRONコードは広辞苑(岩波書店)の監修者で国語学の山口明穗東大名誉教授を中心に、東大文学部と研究総合博物館の研究者が「人文系多国語テクスト・プロセシング・システムの構築に関する研究グループ」というチームを編成して制定をすすめていますが、1997年後半にはいよいよ第一期分約 6万字が完成し、BTRONにのるそうです(1998年2月段階でも感性の時期はわからない)。JIS第1水準・第2水準に補助漢字をあわせても 13000字ほどですから、人文系の研究者にとっては朗報です(TrueTypeフォントはリコーが製作。ドットフォントは「東大明朝」として無料公開の予定)。

 TRONコードは中華人民共和国でも関心が高く、TRON協会と共同で研究をすすめているということす。あまり速い歩みとはいえませんが、最終的には日中それぞれ 10万字以上を収録し、さらに 400はあるといわれる歴史上あらわれたすべての文字集合を規格化し、人類の知的資産を未来に残す文字コードを決めるわけですから、拙速は禁物でしょう。今後に期待したいと思います。


 

 
1998年2月時点における BTRONと TRONコードについての感想

   上の文章は1996年9月19日の時点で書いたものですが、『電脳文化と漢字のゆくえ』(平凡社)に収録された鼎談中の発言とニュアンスが違うのではないかというご指摘を受けました。
 上の文章を書いた時点では TRONWARE35号の付録についてきた 1B/V2体験版を数時間試用しただけでしたが、その後、3B/Vの上で動く「原稿プロセッサー」について意見をいうMLに参加した関係で 1B/V3の提供を受け、HDDにインストールし、正味十日間ほど使いました。
 なぜ十日ほどかというと、以下の理由で常用するには無理があったからです。
  1. TRONキーボードのキー配列を 106キーボードや 109キーボードで再現しようとしているために、Delキーで文字削除ができなかったり、ESCキーで単語登録のメニューが出てくるなど、キーボードの配列が特異でなじめなかった。添付のフリーウェアで、ある程度、配列を変更できるが、Delキーに文字削除を割り当てることはできない。基本的なキーの機能が違ってしまうのでは、あまりにもストレスが大きい。これほどこだわっているTRONキーボードであるが、品切れでいつ再発売されるか不明だという。
  2. 日本語変換ソフトが現在のレベルからすると、あまりにもちゃちである。しかも、登録単語を Windowsで常用している日本語IMEからもってくることができない。あらためて一語一語登録し直さなくてはならないのでは、仕事にならない。
  3. システムやアプリケーションの起動は確かに速いけれども、個々の動作は Windows95はもちろん、OS/2と比べても遅い。Pentium 200MHz以上でないと使い物にならないだろう。
  4. それと関連するが、遅さをカバーするために三行単位にスクロールさせているので、画面の動きがぎくしゃくし、目が著しく疲れる(486系マシンで使っていたので、それでも遅かった)。
こうした問題点は、3B/Vではすべて解決されるらしいですが、ぼく自身の中で BTRONに対する過大な期待がしぼんだのも事実です。
 『電脳文化と漢字のゆくえ』の鼎談の後で知ったことですが、TRONコードではインターネット上で漢字を公募し、三人以上の要望があれば無制限に文字セットにいれていくという方針に愕然としたということもあります。
 というわけで、現時点では BTRONと TRONコードにかなり懐疑的になっています。もちろん 3B/Vが Windowsに慣れたユーザーにも抵抗なく使えるすばらしいシステムになり、TRONコードが年内にちゃんと出てくるのなら、いつでも BTRONを見直します。

 

Copyright 1997 Kato Koiti

This page was created on Sep19 1996; Updated on Feb17 1998.




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