文庫で読む石川淳

加藤弘一

岩波文庫

『至福千年』

 幕末の騒然とした江戸を舞台に、幕府転覆をねらう隠れ切支丹の一派とそれを阻止しようとする一派が死闘を演ずる。江戸の名所がつぎつぎと登場し、観光小説的な興味もあって、江戸ファンにはこたえられない一篇。(解説 澁澤龍彥)

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『森鷗外』

 鷗外の最高傑作は晩年の史伝三部作だというのが定説だが、最初からそうした評価が確立していたわけではない。鷗外の生前も死後も、史伝はずっと無視されきてた。明治政府の顕官であり、新文学の紹介者であった鷗外は、新時代の旗手というイメージがあまりにも強く、急に幕末の儒学者の評伝などを書かれても、同時代人としては応対に困ったにちがいない。本書はそうした鷗外観にまっこうから戦いを挑み、「鷗外を江戸の頽廃の中に立たせる」という転換(丸谷才一)をおこなった記念碑的評論である。

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『法王庁の抜穴』

 アンドレ・ジッドのアンチ・ロマンを若い日の石川が訳したもの。訳文には勢いと洒脱さがあり、戦前の翻訳の水準をはるかに超える。なお、この作品は、石川の訳が出るまでは、『法王庁の洞窟』という題で言及されていたという。

 長らく品切だったが、1998年7月、再版された。急いで買うべし。

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角川文庫

『新釈雨月物語』

(解説 )

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講談社文芸文庫

(解説 立石伯  作家案内 菅野昭正)

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『紫苑物語』

 古墳時代の「八幡縁起」、平安時代の「紫苑物語」、室町時代の「修羅」という石川淳の歴史ファンタジー三篇を一冊におさめる。物語のおもしろさ、文章の力強さもさることながら、日本国家論ともなっている石川の最高傑作。(解説 立石伯  作家案内 鈴木貞美)

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『白頭吟』

 摂政宮暗殺をめぐって暗躍する大正期のアナーキスト群像を描いた青春小説。左翼暗黒史観に毒された者は、こんなリベラルな気風にあふれた時代が戦前にあったのかと驚くはずだ。(解説 立石伯  作家案内 竹盛天雄)

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『江戸文学掌記』

 晩年の石川が一筆描きにさらっと書いてみせた江戸文学早わかり。もとの作品を読みたくなることは間違いない。(解説 立石伯  作家案内 立石伯

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『安吾のいる風景・敗荷落日』

 石川は追悼文や推薦文、解題などの短い文章でも、余人の追随をゆるさない冴えを見せた。本書は追悼文の白眉として有名な表題作二篇のほか、「安部公房『壁』序」「大宰治昇天」、江戸戯作家論をおさめる。(解説 立石伯  作家案内 立石伯)

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『黄金伝説・雪のイヴ』

 敗戦直後の焼け跡・闇市を背景にした短編十篇。当時の知識がないとわかりにくいかもしれない。(解説 立石伯  作家案内 日高昭二)

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『落花・蜃気楼・霊薬十二神丹』

 「落花」はスラプスティック調の愉快な活劇で、わたしの好きな作品の一つ。岩波版選集にははいっていないので、この本が出てくれたのはありがたい。(解説 立石伯  作家案内 中島国彦)

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『影・裸婦変相・喜寿童女』

 怪奇趣味の短編七篇をおさめる。「喜寿童女」は傑作。(解説 立石伯  作家案内 井澤義雄)

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『荒魂』

 見る者しだいでさまざまに姿を変える佐太という男の周囲でまきおこる混乱を描く長編ファンタジー。中期の代表作。(解説 立石伯  作家案内 島田昭雄)

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『ゆう女始末・おまえの敵はおまえだ』

 晩年の渋い短編群と戯曲をおさめる。渋い。(解説 立石伯  作家案内 塩崎文雄)

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『普賢・佳人』

 初期作品四篇。エネルギーのかたまりのような饒舌体で書かれており、若い読者には難物かもしれない。(解説 立石伯  作家案内 石和鷹)

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集英社文庫

『狂風記』上下

 石川晩年の最高傑作。ラテンアメリカの魔術的リアリズムも、この奔放自在な幻想小説の前では色あせて見える。(解説 高橋源一郎)

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『六道遊行』

 奈良朝の盗賊が現代にタイムスリップするというsf的な設定の長編。この作品にだけは疑問符をつける。(解説 石和鷹)

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新潮文庫

『焼跡のイエス』

(解説 )

『紫苑物語』

(解説 )

『背徳者』

 アンドレ・ジッドのレシの翻訳で、名訳の誉れ高い。

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ちくま文庫

『新釈雨月物語・新釈春雨物語』

 秋成の物語集二篇の現代語訳。秋成の世界というより、石川の世界になっている。(解説 三島由紀夫)

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『新釈古事記』

 古事記のアルカイックな文体を現代に甦らせた新たな古典。ストーリーを伝えるだけでなく、原作の歌物語の体裁を再現した詩劇となっている。(解説 西郷信綱)

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『癇癖談』

 「癇癖談」「諸道聴耳世間猿」「西山物語」という江戸期の随筆三篇と、本居宣長が初学者のための要項として書いた「宇比山踏」をおさめる。文章の妙を堪能すべし。(解説 野口武彦)

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ちくま学芸文庫

『森鷗外』

 鷗外の最高傑作は晩年の史伝三部作だというのが定説だが、最初からそうした評価が確立していたわけではない。鷗外の生前も死後も、史伝はずっと無視されきてた。明治政府の顕官であり、新文学の紹介者であった鷗外は、新時代の旗手というイメージがあまりにも強く、急に幕末の儒学者の評伝などを書かれても、同時代人としては応対に困ったにちがいない。本書はそうした鷗外観にまっこうから戦いを挑み、「鷗外を江戸の頽廃の中に立たせる」という転換(丸谷才一)をおこなった記念碑的評論である。(解説 福田和也)

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『夷斎筆談 夷斎俚諺』

 戦後、石川は堰を切ったように執筆活動を再開するが、エッセイでは「夷斎」ものと呼ばれるようになる、漢文くずしの自在な文体で世相を切りとったスタイルを打ちだす。

 本書は最初期の『夷斎筆談』、『夷斎俚諺』の二冊を一本にまとめたもので、価値観の混乱にすこしもゆらぐことのない、石川の思想の強靭さがうかがえる。(解説 加藤弘一

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中公文庫

『天馬賦』

 全共闘運動華やかなりし頃、若者の反抗に共感する老人を描いた中編集。

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『文学大概』

 日本近代文学を江戸文学との連続性の見地から論じた批評集。

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『文林通言』

 朝日新聞連載の文芸時評をまとめたものだが、文学の価値転換を果たし、従来の時評の書き方を一新したことで名高い。

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『諸国畸人伝』

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『夷斎小識』

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『夷斎座談』

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冨山房百科文庫

『夷齋筆談』

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Copyright 1999 Kato Koiti
This page was created on Nov11 1995; Updated on Jul29 2003.
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