シャルドンヌの小説を映画化した3時間近い文芸大作。2000年のカンヌ映画祭正式出品で、エマニュエル・ベアールとイザベル・ユペールが共演しているのに、日本公開の話はないらしい。
牧師のジャンはコニャック醸造所一族の娘であるポリーヌと再婚し、リモージュのプロテスタント社会を離れてスイスで新生活をはじめるが、伯父の死によって傾いた一族の事業を守るために陶器工場を引き継ぐ。頼みのアメリカ市場を安いドイツ製品から奪いかえすために工場の新設を計画するが、第一次大戦の勃発によって頓挫する。ジャンは計画をあきらめず経営に没頭するが、ポリーヌとの間は冷えていく。新工場はようやく竣工するものの、大恐慌のためにアメリカ市場からの撤退を余儀なくされる。ジャンは活路を国内市場に求め、白磁の新製品を開発しようとするが、脚を痛めて病床につく。ポリーヌはジャンに代わって社長に就任し、新製品を完成させる。
1900年から大恐慌期までの30年余をあつかうので、どうしても駈け足になるが、フランスのブルジョワ一族の執念が分厚く描かれ見ごたえがある。プロテスタントの文化が一般のフランス人と違うということも見えてくる。
イザベル・ユペールはジャンの前妻の役で娘とパリに住んでいるが、リモージュの生活に微妙な影を落としている。すくない出番で存在感をもたせるにはイザベル・ユペールが必要だったのだろう。
長尺なので画質は期待しなかったが、最高レベルだった。色彩は深みがあり、陽光まばゆいリモージュ、冷え冷えとしたパリ、森閑としたスイスと映像美に酔った。PAL版はきれいだというが、本当らしい。サラウンド効果もよく、舞踏会や工場のざわめき、小鳥のさえずる田園風景、殷々と砲声が響く戦場など、臨場感がある。