日本では劇場未公開作品だが、キャストがすごい。ナスターシャ・キンスキー、ルドルフ・ヌレエフ、ビビ・アンデルソンというヨーロッパでも別格の役者に、アメリカのハイブラウ映画を代表してハーヴェイ・カイテルがくわわる。これで芸術映画を作ったら、鬼に金棒ではないか。なぜ、日本で公開されなかったのだろう?
理由は簡単。つまらないからだ。リーフレットにはテロリストに好意的な内容が問題になったとあるが、配給会社を甘く見てはいけない。すこしでもヒットする見こみがあれば、公開されていたはずだ。
中西部の田舎町からニューヨークに出てきたエリザベス(キンスキー)がたちまちトップ・モデルになり、パリの写真展で知りあった謎の男と恋に落ちる。その男は世界的なバイオリニストだったが、テロの巻添えで殺された母の仇をとるために、エリザベスを囮にして、テロリスト・グループに接近しようとしていた……。
と要約すればわかるように、ヨーロッパに対する文化的コンプレックスまるだしの映画なのである。ユーロピアン・テイストの洒落たサスペンス映画を作りたかったのだろうが、監督がイモすぎた。
ナスターシャ・キンスキーはウィスコンシンの田舎娘には見えない。当時の彼女が「美しさの頂点」にいたのは確かで(モデルになる前、ニューヨークで右往左往する場面がすばらしい)、ヌレエフとの濡場もあり、ファンは買っておいた方がいい。それにしても、これだけの役者をそろえながら、惜しいとしか言いようがない。
画質・音質ともVHSなみ。特典は予告編と主演三人の経歴だけ。