二年前に早稲田松竹で再見して感動をあらたにしたが(映画ファイル参照)、DVDで見なおしてみると、半分以上忘れていた。理屈をつけようと思えば、いくらでもつくが、映像の迫力は別格だ。
映像の強さは骨太の構図から来ているのではないかという気がする。砂漠の場面だけでなく、高速道路も、ロサンゼルスを見わたす庭、学校周辺の道路、ヒューストンの裏町も、幾何学的といっていいくらい単純明解な線で構成されているのだ。もちろん、そこで演じられるドラマは繊細きわまりないのだけれども。
特典は1枚の空き容量におさまる分量だが、中味が濃い。未公開カットは22分あり、ヴェンダースの解説がつく。トラヴィスが介抱される前後の説明的な場面が多い。ばっさり切ったから、構成の強さが生まれたのだ。ハンターにガールフレンドができる場面とか、ナスターシャ・キンスキーと別の客の場面もあるが、切って正解だったろう。
スチール集はストーリー順にならんでいて、自動表示させると紙芝居のように一応の筋が追える。カンヌ映画祭の撮影場面は4分ほどだが、会場前で出演者一同が報道陣のフラッシュを浴び、大階段を上っていく栄光の場面をとらえている。オーロール・クレマンは黒いシックなドレスだが、ナスターシャ・キンスキーは緑色の水玉のブラウスで、映画とは逆に幼く見える。
特典の一番の目玉は"Out-Take"としておさめられている作中映画だろう。家族が幸福だった頃の8mm映画が作中で上映されるが、そのオリジナルを見ることができるのだ。時間にして6分半だが、ハリー・ディーン・スタントンのナレーションがつく。ナスターシャ・キンスキーがため息が出るほど美しい。
PAL版のせいか、色が深く美しいが、砂漠の場面などでモアレがちらちらするのは残念だ。音質は弦をはじく感じがよくでている。サラウンド感は薄い。