SF映画の古典中の古典である。「宇宙家族ロビンソン」をはじめとして、影響を受けた作品は数知れない。時代遅れになっているのではないかと危惧していたが、今見てもおもしろい。
TVで白黒の不鮮明な短縮版でしか見ていなかったが、今回、カラーの完全版を見て、画質の良さに驚いた。半世紀以上前の映像がこんなに美しく残っているなんて驚異である。もちろん、カラー映画初期のこってりとした色調だが、それがまたいいのである。アルタ役のアン・フランシスの肌のなんとなまめかしいことか。もっと早く見ておくのだった。
特撮は半世紀前にしてはすごいが、今のレベルから見るとおままごとである。しかし、それがすこしも瑕になっていない。円盤やロビーなど、デザインの美しさは特筆ものだ。
『テンペスト』を下敷きにしているのは有名だが、最初に見た頃は『テンペスト』は知らなかった。原作を読み、舞台もいくつか見た現在、あらためてこの映画を見ると、単に設定だけでなく、人間の暗黒面というテーマも『テンペスト』を踏襲していたことに気づいた。そこには違いもある。『テンペスト』が注目したのは個人の暗黒面だあったが、この映画は人類の暗黒面に光をあてている。そこがSFのSFたる所以なのだろう。
画質の良さは先に述べたが、音質もいい。1950年代のアメリカの技術に脱帽する。
特典はオリジナル予告編だけだが、こういう作品こそ特典ディスクをつけてほしい。アメリカでは昨年11月、公開50周年を記念して二枚組特別版が出ている。