ご存知「サンダーバード・シリーズ」の劇場版で、1966年に製作されていたが、2004年にNHKで放映されるまではコアなファン以外には忘れられていたようだ。
2004年は実写版リメイクのおかげで「サンダーバード」に再び注目が集まった年だ。TVシリーズと本作をふくむ劇場版2本がデジタル修復されて再テレシネされ、音声も5.1chDTS化された。このDVDに収録されたメイキングと音声解説も2004年に製作されている。
忘れられていたのは出来が悪かったからだろう。横長のシネスコ・サイズ、しかも5.1chDTS音声の迫力は感動的だが、ストーリーがお粗末なのだ。45分番組ならメカとキャラクターの魅力だけで引っぱれるが、90分をこえる映画では無理である。
日本語吹替は黒柳徹子がレディ・ペネロープをやっていたので1967年日本公開時のものかと思ったが、やけに声が婆くさい。こんなはずはないと思い、調べたところ、日本公開時の音源がなくなっていたので、2004年に再録音したものとわかった(Wikiepediaによる)。黒柳徹子の輝くような声のレディ・ペネロープが失われたのは惜しい。
しかし、このDVDは買ってよかったと思っている。まず、オ5.1ch化されたオリジナル音声で見ることができたこと。テーマ曲も爆発音も、段違いの迫力である。レディ・ペネロープの声は気品があって色っぽく、一聴の価値がある。日本語吹替はモノラルなので、迫力も半減だ。英語版で見ることを強くお勧めする。
知らなかったが、レディ・ペネロープの声をやっていたのはシリーズの製作者ジェリー・アンダーソンの妻で、共同製作者でもあるシルヴィア・アンダーソンだった。メイキングで姿を見ることができるが、今も昔も黒柳徹子によく似ている。
メイキングは「「サンダーバード」の誕生」、「人形とロケット」、「模型での撮影」の三本にわかれているが、本篇よりもおもしろい。
音声解説はシルヴィア・アンダーソンと監督のデヴィッド・レイン。現在のシルヴィア・アンダーソンの声は黒柳徹子の吹替同様、婆くさくなっている。
彼女はセンチュリー21スタジオはファミリーのようだったと懐かしがっていた。家内工業はけっこうだが、ストーリーまで彼女とジェリーの二人で作っていたというので、オイオイと思った。脚本がちゃんとしていれば、劇場版は興行的に失敗することはなかったろう。家内工業の限界である。
話はつまらないが、デジタル技術で甦えった映像と音声(英語版)はなかなかである。こうなると再テレシネされたTV版シリーズのDVDがほしくなってくるが、値段が値段である。第1話と特典映像だけをおさめた「体験版」があるということなので、試しに買ってみようか。