Technobahnに「土星の衛星「タイタン」は地球の石油埋蔵量を上回るエネルギー資源の宝庫」という記事がのっている。タイタンの表面にメタンやエタンの湖があることが確認されたというのだが、いくら厖大に存在しても地球に運んでこれるはずはなく、絵に描いた餅である。
しかし、この発見は別の意味で重要だ。石油の無機起源説の傍証となるからである。
石油は太古のプランクトンが地中に埋まり、高熱と高圧で液化したものだと考えられているが、それとは別に、地球形成の際に取りこまれた星間ガスが起源だという説もある。これを石油無機起源説という。
トンデモ学説のように思うかもしれないが、石油無機起源説は19世紀には有機起源説とならぶ学説としてまじめに議論されていた。20世紀になり、石油から生物の痕跡が発見されると、西側世界では下火になったが、ロシアでは有力な仮説として着々と研究が進められ、古細菌と地底生物圏の発見以降、世界的に見直されつつあるという。詳しくはトーマス・ゴールドの『未知なる地底高熱生物圏』と『地底深層ガス』を読んでほしい。ロバート・アーリックの『トンデモ科学の見破りかた -もしかしたら本当かもしれない9つの奇説』にも、一章をさいて肯定的に紹介されている。
ただ、無機起源説が正しく、石油が無尽蔵にあったとしても、手放しではよろこべない。二酸化炭素が温暖化の原因かどうかは置くとしても、二酸化炭素よりもはるかに温室効果の高いメタンが厖大に存在することになるからである。無機起源説が正しいとしたら、温暖化は防ぎようがない。どうあがいても無駄である。
もともと今頃は気分が沈む時期だが、今年は新型インフルエンザの報道のせいで余計鬱がひどい。
新型インフルエンザ・ウォッチング日記と高病原性鳥インフルエンザ海外報道抄訳をチェックしているが、ウィルスの人間対応が着々と進んでいるらしく、戦々恐々としている。
岡田晴恵氏の『H5N1型ウイルス襲来』が個人でできる対策を紹介していて、これを指針にメディカルマスクとN95マスク、クレベリンの備蓄をはじめている。どれも有効期限が数年あるので、無駄にはならないだろう。
さすがに食料の備蓄までは手をつけていないが、シリアル類やミネラル・ウォーターはいつもより多めに買いこんでいる。
スペイン風邪関係の本を何冊か読んでいるが、恐ろしい話ばかりである。速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』によると、日本での死者数は内務省衛生局の発表した38万5千人が一般的で、それをもとに新型インフルエンザ流行時に64万人の死者が出ると推計されているが、内務省の数字がそもそも怪しいのだそうである。
現在のようにウィルスの検査キットはなかったから、他の死因と誤認された死者が相当いただろうことは容易に想像がつくが、それだけではない。内務省が資料とした都道府県別・月別の統計と見ていくと、岩手県や沖縄県の数字がそっくり抜けている上に、京都府のように流行の途中で集計をやめたところもある。
どうしたらスペイン・インフルエンザの被害の実態に迫れるのだろうか。速水氏は「超過死亡数」という手法を提案する。流行期の死者数から、平常年の死者数を引き、その差をスペイン・インフルエンザによる死者数と推定するのである。速水氏によると、推定死者数は45万31252人にのぼる。従来の説より7万人も多い。
意外だったのはスペイン・インフルエンザは地球を一周した後、一段と凶悪化した第二波の流行がはじまったことである。罹患者数は第一波におよばないが、致死率が5倍以上高かったので、死者数は第二波の方が多い。
新顔のウィルスは感染が拡大するにつれ急速に弱毒化していくものと思いこんでいたが、一年や二年では弱毒化しないようである。
鳥インフルエンザのインドネシア株は致死率80%といわれている。途上国であるから、鳥インフルエンザと診断されずに自然治癒した隠れ感染者がかなりもれている可能性がある。80%は額面どおりには受けとれないが、それでも効率であることには変わりはない。
日本の医療はぎりぎりのところで運営されているから、新型インフルエンザ患者が一万人も出たら崩壊してしまい、まともな治療は受けられなくなるだろう。政府の致死率2%という見通しは甘すぎる。
40才以上は致死率が低くなるらしいが、若者ほどではないにしても高率で死ぬのだろう。自分が生きのびられるとはとても思えない。備蓄よりも身辺整理をはじめた方がいいかもしれない。