AmazonがKindle版の漫画の第一巻だけを5月6日まで99円で販売している。Kidleは買ったはいいが読みたい本がなく、積ん読状態だったのでこの機会に何点か買ってみた。
ヤマザキマリ『イタリア家族 風林火山』http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009WQ63CW/horagai-22 はイタリア人と結婚した作者が夫の実家に対するもろもろの感情を吐きだしたエッセイ漫画。十分面白いけれども、ある程度落ちついてから書かれているので、この前の巻の方が面白いと思う。
清原なつの『家族八景』1 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0096I6V8M/horagai-22 は筒井康隆の連作短編の忠実な漫画化。絵がスカスカ。原作には遠くおよばない。
ジョージ秋山『銭ゲバ』1 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009KGNPIO/horagai-22 は懐かしいマンガだ。あの長い作品の前半部分で496ページもある。下巻は616円だから、今なら715円で全部そろうことになる。そのうちじっくり読みたい。
ナカノ『ビブリア古書堂の事件手帖』1 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00BAPP14Y/horagai-22 は三上延のベストセラーの漫画化。原作は未読でTV版しか見ていないが、TVと同じ展開である。TV版は思いのほか原作に忠実だったようだ。
剛力彩芽が原作の表紙のイメージと違うと不評だったらしいが、漫画版は剛力ほどショートカットではないが、長い髪でもない。原作フリークはまた怒り狂っているのだろう。
漫画版の栞子と剛力彩芽の栞子では剛力の方が断然いいと思う。原作は読む気がないので、どちらが原作に近いかは興味がない。剛力主演で映画化してほしいと思うが、視聴率が悪かったので無理だろう。
カヅホ『キルミーベイベー』1 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00CA07UBU/horagai-22 表紙買いしたが、これ傑作。今回、続きを読みたくなった唯一の作品だ。
Kindle paperwhiteの小さな画面で漫画はどうかと思ったが、意外に読めるとわかった。99円で最初の一巻だけ読めるサービスは継続してほしいと思う。
サンシャイン劇場で「メアリー・スチュアート」http://www.sunshine-theatre.co.jp/lineup/207.html を見た。シラーの「メアリー・スチュアート」はこれまでパルコ劇場で上演してきたが、今回は違う劇場で栗原小巻と樫山文枝という新劇界を代表する二大女優の競演。神業のような麻実れい/白石加世子版を南果歩/原田美枝子版でぶち壊してくれた後だったので期待したが、まったく違う芝居だったので面食らう。
というか、これまでパルコで上演していたのはシラーの戯曲をダーチャ・マライーニが現代的な二人芝居に書き換えた版で、今回はオリジナルそのままらしい。 いかにも19世紀の戯曲で説明的で冗漫、古臭い。シェイクスピアの方がよほど現代的だ。古臭いだけならともかく、二人の女王が安っぽくなってしまった。メアリーはくだくだ愚痴をこぼしつづけ、エリザベスは王殺しの汚名におびえるヘタレである。
栗原小巻と樫山文枝だけに、腐っても鯛で格調を保っていたが、原作重視の上演がいいとは限らないと再認識。パルコでやっていたダーチャ・マライーニの書き直し版をこの二人でやったら名舞台になっただろうに。
Kindleの第一巻だけ99円セールで映画の原作の漫画を買った。
まず、こうの史代『夕凪の街 桜の国』http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009DYODPM/horagai-22 一巻で完結。原爆ものだが、田中麗奈主演の映画がよかった。
同じこうの史代の『この世界の片隅に』1 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009DBYLLG/horagai-22 北川景子主演でTVドラマ化され、戦時中の呉の生活を淡々と描いている。最初しか読んでいないが、『夕凪の街』よりもよさそうだ。
村上たかし『星守る犬』http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009DYOCGM/horagai-22 も一巻で完結。西田敏行主演で映画化されているが、予告編しか見ていない。映画の犬はもっさりした大型犬だったが、原作は賢そうな小型犬である。
毎日新聞に「武雄市図書館:CCC運営 前年の5倍1カ月で来館者10万人」http://mainichi.jp/select/news/20130502mog00m040003000c.html という記事。 ペンクラブの言論表現委員会は武雄市図書館を問題化しようとしているが、最初から無理筋だったのだ。公共施設でスタバが稼ぐのはけしからんという委員がいて、じゃ国会図書館や都立中央図書館の食堂を外部委託しているのはどうなのだと聞くと、スタバはけしからんと繰りかえすだけだった。
Tカードで借りた本が外部に漏れるおそれがあるとこじつけようとしているが、それも無理筋。仮に危険性があったとしても、Tカードを使わない選択肢があるんだから、自己責任論は崩せない。改装前の図書館を視察してきた委員が実にいい図書館だったと言っているが、そんなことを主張したら都会人がスタバをありがたがる田舎者をバカにするという構図にはまるだろう。市民にここまで支持されていると振り上げた拳の下ろしようがなくなる。
憲法改正問題にしても言論の自由や人権を強化する方向に改正するという議論ができない時点で負けである。左翼的主張が現実離れしているという自覚があるので、現状維持という方向でしか動けなくなっているのだ。ドイツの憲法改正は改正ではないという議論に持ちこもうとしているが、これも無理筋である。
ペンクラブは左翼の巣窟だけに、以前、沖縄が独立したら米軍基地の代わりに中国軍基地ができると言ったら食ってかかられたことがあった。しかし http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130505/frn1305051059000-n1.htm のようなことが現実に起きている。日本が軍国主義化しなければ東アジアは平和だという論法を本気で信じている人はさすがのペンクラブでも少数派だが、それに代わる議論ができないので信じているふりをしている人がかなりいると見ている。左翼Watchはなかなか面白い。
「アイアンマン3」を3D字幕版で見た。地下室にアイアンマンスーツがずらりと並んでいたのであるが、自律機能が搭載されたという設定で最後に全スーツが活躍する。派手は派手だが、なんでもありではかえってつまらなくなる。
ペンクラブの電子文藝館に歩く文学史のようなお婆さん委員がおられて、これまでも文学史の一齣になるような貴重な体験談を聞かせてもらってきたが、今日は鈴木大拙に関する啞然とする話を聞いた。スウェーデンボリ関係を調べた時に意外に生臭い人だなと思ったが、本当に生臭かった。
出光美術館で「源氏絵と伊勢絵」展を見た。源氏物語と伊勢物語の名場面を絵画化した作品が多数残っているが、両者の影響関係を一目でわかるようにしようという意欲的な展示だ。
期待したのであるが、あまり面白くなかった。こちらの勉強不足が大きいかもしれない。○○の段とあっても、きれいに忘れている。どういう場面かわかれば面白く見ることができたのかもしれない。記憶力の衰えを切実に感じる。 「リンカーン」を見た。ゲティスバーグ演説も、暗殺の場面もあえて出さず、議会の多数派工作という地味な話だけで2時間半もたせ、ちゃんと面白いのだからたいしたものだ。スピルバーグの職人芸は衰えていない。
某誌の某企画が流れた。途中からこれは難しいんじゃないかと思っていたら予感が当たってしまった。現在の出版業界は本当に厳しくて、ごく少数の恵まれた会社を除いて無理はきかなくなっている。仕切り直しになればいいが、どうなるか。
早稲田松竹のソクーロフ特集で「陽はしづかに発酵し…」を見た。昔見たときは寝てしまったが、今回は面白かった。ロシア人による植民地支配が背景にあると気がつくと案外わかりやすい映画だった。
モスクワの医大を卒業した若い医者が僻地のトルクメニスタンに派遣され、地元の古儀式派に病気になる者が少ない理由を研究している話を縦糸に、少数民族問題や宗教問題、核開発問題が織りこまれている。ウラン鉱山跡だという黄色い荒涼とした大地やけたたましい民族音楽といった本物の力を借りた撮り方があからさまだが、ソクーロフの映画はみんなそうかもしれない。寒天で固めたエビが不気味だったが、普通に売っているのだろうか。
国立博物館で「大神社展」を見た。神宝の類は「伊勢神宮展」におよばないが、最後の神像が群が圧巻だった。仏像の影響で作られたのだろうが、仏像とはまったく違うのだ。
瞑目しているもの、半眼のもの、カッと眼を見開いたものとさまざまなだが、すべて自閉しているのだ。仏像は半眼で瞑想していても慈愛が放射され、おいでおいでしている雰囲気だが、神像は自分の内側に閉じ籠もっており、他者を配慮しない。カッと眼を見開いた像も密教の忿怒尊とはまったく違う。怒りも威圧感もなく、高いテンションのまま凍りついている。他者というものが欠落しているのだ。こういう神様たちに何をお願いしても無駄だろう。
神像は御神体であって、基本的に公開されるものではないから、こうした自閉的なありようは様式の伝播ではないだろう。神の自閉性というか隔絶性は神道の本質に根ざすのではないのか。
神道というと敷居が低く、寛容なイメージをもっていたが、一皮むくとこんなに自閉的な神が鎮座ましましていたのである。 神像の展示室の控えの室に脇侍が一対展示してあったが、standing attendantsとあった。脇侍はattendantなのだ。
キネカ大森のアルドリッチ特集で「合衆国最後の日」を見た。なんと完全版である。過去に短縮版はビデオ化されているが、完全版はビデオにもDVDにもなっていないだけにかなり混んでいた。
ベトナム戦争の真相を暴こうとして冤罪を着せられて刑務所に入れられた元空軍大佐が脱走し、核ミサイル基地を乗っとって大統領に秘密文書を公開しろと脅迫する話だ。バート・ランカスター演ずる元大佐はミサイル・システムのエキスパートという設定で、警戒厳重な基地に侵入する手口が真に迫っている。
どこまで事実に即しているかはわからないが、微妙にアバウトなところなど実にリアル。大統領とその側近が秘密文書を読んで初めてベトナム戦争の真相を知り、愕然とする場面が本当っぽかった。
併映の「カリフォルニア・ドールズ」はどさ回りの女子プロレスタッグと、ピーター・フォーク演じるオヤジマネージャーの話で、こちらも傑作。
おんぼろキャデラックで安モーテルを泊まり歩き、ギャラを10ドル、20ドル値切られるという世知辛い世界。マネージャーは試合をとるために電話しまくっている。食事は大体ハンバーガーで、ダイナーにいくのはたまの贅沢になる。練習場所もなく、脇道で徐行する車を追ってランニングするくらい。
先が見えない状況で、大物と一夜をともにして大舞台のチャンスをつかみ、そのチャンスをいかすためにイカサマ賭博で金を稼ぎ、それを元に思いきりショーアップする。もちろんクライマックスは試合だ。これが凄い。
日本人レスラーとしてミミ萩原が登場するが、多分、日本に遠征するという後日譚があるのだろう。たっぷり稼いで帰ってほしい。
新文芸座の市川雷蔵特集で「陸軍中野学校」を見た。加東大介演ずる草薙大佐が孤立無援で作りあげたことになっていて、予算が足りないので金策の話ばかりだが、面白かった。
草薙大佐となると「攻殻機動隊」を連想した。大佐と少佐の違いはあるが、モデルだろうか。草薙素子の頭の中に加東大介の脳がはいっていたら恐ろしいことだ。 小川真由美が重要な役で登場するが、これがすばらしいのだ。小川真由美の最高傑作ではないか。
併映は「陸軍中野学校 雲一号指令」。中野学校シリーズの第二作だが、冒頭のちゃちな船の爆沈場面でいやな予感がした。はたして第一作とは比べものにならない安っぽい駄作。
中野学校シリーズは五作まで作られているが、最後の「陸軍中野学校 開戦前夜」の評判がいいようだ。どこかでかからないか。
早稲田松竹のフリッツ・ラング特集で「死刑執行人もまた死す」を見た。プラハで起きたナチス総督ハイドリッヒに対する爆弾テロ事件を題材にブレヒトが原案と最初の脚本を担当。真犯人をかばうためにプラハ市民が口裏を合わせるというサスペンスで、一人でも裏切ったら証言した全員が処刑されてしまう。手に汗握る展開だが、どこかのんびりしているのは1940年代のアメリカ映画だからだろうか。
新文芸座の市川雷蔵特集で「剣」を見た。時代劇かと思ったら三島由紀夫の同題短編で現代の大学の剣道部の話だった。禁欲的で抜身の刀のように鋭い主人公が自滅していく物語で、これが凄い。いかにも三島の短編だ。
原作は講談社文芸文庫から『中世・剣』として出ていたが、現在は長期品切れだ。文芸文庫は高い値段で売っているのだから、品切れにしないほしい。
併映の「剣鬼」もよかった。世継ぎをなしたものの発狂死した側室に仕えていた侍女が父親の知れない息子を産んで急逝。侍女は側室の愛していた斑犬の世話をしていたので、犬の子供ではないかという噂が広がり、息子は斑平と名づけられる。
斑平は叔父に引きとられ、無役の小者ばかりが集まる長屋で育つが、長ずるにしたがって花を育てる才能があらわれ、城内の庭の世話を任される。発狂した側室の産んだ息子が藩主になっていたが狂気の兆候があらわれ、隠居させようというお家騒動がもちあがる。
内紛の上に、お家騒動を嗅ぎつけた幕府の隠密が領内に出入りするようになるが、斑平は小姓頭神部菊馬に引きたてられ、自滅の道を突き進んでいく。原作は柴田練三郎の同題の短編だそうであるが、市川雷蔵には自滅する話が似合う。
カンヌで悪評だったという「藁の楯」を見た。設定は面白いが、最初に見せ場がきてしまって後は尻すぼみ。ラストは人を集めたもののまったく盛り上がらず。駄作。
「最強の二人」を見た。障碍者と黒人青年の交流なんて辛気くさそうで敬遠していたが、二本立てなので、ついでのつもりで見たらとてもよかった。傑作といっていいだろう。二本立てでなかったら絶対に見ることはなかっただろう。
原作はフィリップのモデルになった人の自伝で『A Second Wind』という英語版の題名そのままで邦訳が出ている。映画は原作の最後の部分にあたるそうだ。
併映は「ミッド・ナイト・イン・パリ」。こちらが本命だったが、まあまあの出来。ベルエポックの時代に生きながら、もっと昔に憧れる美女を演じたマリオン・コティヤールがすばらしかった。
「LOOPER」を見た。わりとよかった。ピカレスク風に味つけしたタイムトラベルものだが、殺人が不可能になった30年後の未来からマフィアが殺す人間を過去に送りこんで来るという設定。ルーパーとは未来のマフィアと契約した殺し屋で、標的が背負ってきた銀の延棒が報酬になる。ルーパーをはじめた時点から30年以上生きたルーパーはマフィアに捕らえられ、過去の自分に殺させる。これを「輪を閉じる」という。
主人公も「輪を閉じる」破目になるが、未来の自分(ブルース・ウィリス)に逃げられてしまう。未来の自分は妻を殺された復讐に子供時代のマフィアのボスを狙う。最後は実写版「童夢」になった。
「オブリビョン」を見た。いろいろなSF映画からいいとこどりしてモダニズムの未来世界を作りあげている。監督の美的センスでもっている絵だが、モダニズムの風景の中で唯一人間くさいオルガ・キュリレンコの表情が出色。いくら見ていても見飽きない。もちろん美人なのだが、風景との対比が効いているのだろう。
落ちは「○○○○○○」だが、伏字にしておこう。近年のSF映画の中では一番よかった。