1996年8月3日と8月7〜10日の5日間、東京両国のシアターXで、「サクラのサクラ 原体験」という安部公房の五大長編(『砂の女』、『他人の顔』、『燃えつきた地図』、『箱男』、『方舟さくら丸』)を再構成し、戦後史を描いたオムニバス劇が上演された。構成・演出は、桐朋学園大の安部ゼミの助教授だった大橋也寸氏。出演は演劇集団「円」の俳優を中心に、元安部スタジオのメンバーがくわわった。
公演のない4日〜6日の3日間は大橋氏の指導でワークショップが開かれ、初日の4日には「安部システム」という安部公房が独自につくりあげた俳優訓練法が、元安部スタジオ・メンバーによって実演された。呼吸法とイメージ・トレーニングを中心にした静的な身体訓練で、内面を重視したスタニスラフスキー・システムや、日本の伝統芸能の手法をとりいれた小劇場系の訓練法とはまったく発想を異にするユニークなメソッドである。なお、この実演は、4月にコロンビア大の国際シンポジュウムでおこなわれたものとほぼ同じものという。
安部公房ファンの集う場所として知られる Boxman's Homepageの主催者、清水慎悟氏によって、安部公房MLが発足した。アメリカには坂口安吾MLがあるが、日本で運営される日本作家のMLとしては、多分、最初と思われる。
安部公房ファンなら誰でも参加できるが、詳しくは Boxman's Homepageを参照のこと。
日本の文芸作品を海外に紹介する上で功績のあった翻訳者におくられる野間文芸翻訳賞の第7回受賞者に、安部公房のスペイン語の翻訳でしられるフェルナンド・ロドリゲス・イスケルド氏が選ばれた。受賞理由は「安部公房『他人の顔』(Ediciones Siruela社)を中心とする翻訳に対して」。授賞式は1996年9月27日、スペインのマドリードでおこなわれる。
「ダ・ヴィンチ」1996年10月号が「安部公房の解体全書」として、安部公房を6ページにわたって特集した。
年譜、文庫本案内、カーマニアだったこと、大正生まれの作家にはめずらしくワープロを使っていたこと(機種は「文豪」!)などのトピック紹介のほか、娘の真能ねりさんのインタビューが掲載されている。
このインタビューは「ダ・ヴィンチ 作家解体全書2」に再録されている。(Updated Oct15 1997)
コロンビア大の「安部公房記念祭」でおこなわれた、福のり子氏構成による写真展が東京でも開催されている。
会場のウイルデンスタイン東京は、お堀端の国際ビル一階。有楽町線有楽町駅か、三田線・千代田線・日比谷線日比谷駅の帝劇側出口をあがる。帝劇の入口とちょうど対角線の位置にあるので、東京會舘を目印にいった方がわかりやすいかもしれない。
会期は1996年10月26日から11月29日まで、入場無料。日曜・祭日は休み。
カタログは2000円だが、送料370円をそえて現金書留でウイルデンスタイン東京に注文すれば入手できる。なお、NHK教育TVの「日曜美術館」で11月10日(日)に短い紹介が放映される予定。(Nov17)
「芸術新潮」連載の『都市の肖像』のスクラップ
『箱男』から