ハマー・コレクションの一枚。四半世紀前のマイナー作品だが、怪奇映画マニアを意識しているのか、力のはいった作りだ。
17歳のナスターシャ・キンスキーが冒頭から修道女の衣装であらわれる。コスプレ・フェチでも尼さんフェチでもないが、犯しがたい美しさにはっとする。彼女が演じるカトリーヌはスイスの修道院で神に仕える生活を送っているが、悪魔崇拝の秘密結社を主宰するレイナー神父(リー)によって、18歳の誕生日に悪魔に捧げられ、世界支配の道具に供されることになっている。レイナー神父に支配されている父親は娘が不憫で、友人のアメリカ人のオカルト作家、ヴァーニー(ウィドマーク)に助けを求める。
カトリーヌはスイスの修道院から一人で英国に向かうが、ヴァーニーは空港で秘密結社側をだしぬき、彼女を自宅に保護する。レイナー神父は悪魔の力を借りて彼女を呼びよせようとするが、ヴァーニーは必死に戦い、秘密結社の野望を阻止しようとする。
ナスターシャ・キンスキーが悪魔の胎児の出産に感応して悶えたり、催眠術をかけられて全裸になったり、ハマー・フィルムらしい趣向がたっぷり盛りこまれている(ソフトビニル製とおぼしい悪魔の胎児が笑える)。B級にしてはちゃんと作ってあるが、当時のポスターを見ると、もろに安っぽい怪奇映画だ。ナスターシャ・キンスキーは掃溜の鶴といったところ。
画質は期待しなかったが、意外に悪くない。最初の部分はフィルムの傷がほとんどなく、おおと思ったが、30分を過ぎるあたりから傷が目につきだす。予算が足りなかったか。
英字幕がないのが苦しいが(クローズド・キャプションすらない)、台詞は概して聞きやすい。ただし、ナスターシャ・キンスキーだけはアクセントがおかしく、よく聞きとれない。この時点ではまだ英語になれていなかったのだろう。
特典のインタビュー集はこのDVDのために収録したもので、マイク・ハマーと原作者のデニス・ウィトリーの思い出を出演者、監督、プロデューサー、研究者が熱く語っている。ウィトリーは怪奇映画の原作をたくさん提供した悪魔小説の大家で、現在ではほとんど絶版になっているが、マニアの間では絶大な人気らしい。
追記:2003年8月にIMAGICAから日本版が出た。