「デュラス 愛の最終章」を見て、「
10年ぶりに見たが、何度見てもいい。メコンの悠久の流れのようなガブリエル・ヤードの甘美なテーマ曲が頭の中で鳴りつづけている。
英語版とフランス語版、両方で見た(聴いた)が、ジャンヌ・モローのナレーションはフランス語版の方がニュアンスに富み、チャーミングである。また、ジェーン・マーチ本人の台詞よりも、フランス語の吹替の声優の台詞の方が情感がこもっている。レオン・カーフェイは本人の台詞(英語版)の方がいいが、フランス語版も一聴の価値がある。
メイキングは50分と長いが、長さに見あった内容があり、この映画が好きな人ならメイキングのためだけでもDVDを買う価値がある。
アノー監督はロケハンでベトナムを訪れるが、名称こそ変わったものの、デュラスの通ったリセが健在だったし、デュラスを愛した中国人の友人も生き残っていて、当時の二人を語っていた(デュラスが小説家になったことも、『
だが、半世紀つづいた戦争のために、失われたものが多い。CGが本格的に使われるようになる直前に作られた作品だけに、撮影隊は衣装はもとより、エキストラ用の数十台の自転車やバス、渡し船まで作って、1930年代の仏領インドシナを再現する破目になった。汽船の改修費だけでも一億円かかったそうだ。
この映画の成否は主演の少女にかかっていた。ジェーン・マーチに決まるまでに二万人以上のオーディションをしたという。ジェーン・マーチのオーディションの様子が挿みこまれているが、黒い髪で、若い日のデュラスと顔だちがそっくりなのに監督が気づき、原作の表紙の写真と見くらべながら、その場で髪を三つ編みにして、ジャケット写真の顔を作っていく。このシーンはスリリングだ。
残念なことに、画質はそれほどよいとはいえず、フィルムの傷が残っている。音はステレオ感はあるが、サラウンド全盛の現在では寂しい。