『ボーン・コレクター』のメイキングで絶賛されていたので見てみた。TVムービーだが、アンジェリーナ・ジョリーはこの作品でエミー賞とゴールデン・グローブ賞の主演女優賞を受賞し、一躍注目された。監督のマイケル・クリストファーは脚本家としてキャリアを積んだ人で(「イーストウィックの魔女たち」、「ポワゾン」など)、本作が初監督になる。
ヒロインのジア・キャランジは1980年前後に活躍した実在のスーパーモデルで、1986年にエイズで死亡している。麻薬中毒、レスビアン、奇行等で周囲をふりまわしたが、彼女の登場で人形的なモデルから個性を主張するモデルへという流れができたというから、スキャンダルだけの人ではなかった。亡くなって15年たつのにgia-carangi.comやGia Carangi Shrine、Gia Carangi Projectといった熱烈なファンサイトができていて、伝説となっていることがわかる。
スティーブン・フライドによる伝記"Thing of Beauty"をもとにして、証言スタイルで進んでいくが、絵に描いたような成功と没落の物語になっている。性格設定も愛情飢餓の破滅型という定番で、ジアのファンの間では批判が出ている。真ん中の1時間は中だるみを否めない。もともとTVムービーだから、CMのつもりでコーヒー・ブレイクをいれた方がいい。しかし、最初と最後の30分の緊迫感はすばらしく、TVムービーの域を越えている。
記憶に残るシークエンスがいくつもある。金網越しのヌード撮影と、レスビアン相手のリンダを引き止めようとする場面のアンジェリーナ・ジョリーは動物精気をムンムンさせて迫る。作品的には「17歳のカルテ」の方が上だが、不敵路線の魅力という点では本作がまさる。ファンは見るべし。
アンジェリーナ・ジョリーでもっている作品だが、モデル・エージェンシーの社長にフェイ・ダナウェイ、身持の悪い母親にマーセデス・ルールと、ベテランでかためている。ジアに愛されるリンダのエリザベス・ミッチェルは「ER」でもウィーバーとレスビアン関係におちいる精神科医の役で登場している。本作で注目されたのか。
特典のスチールは作中の撮影場面で撮ったファッション写真が多い。ジアの写真に似せようとしているが、結果的にアンジェリーナ・ジョリーとの個性の違いが浮彫りになった。実際のジアは動物的というより、エレガントな印象を受けた。
画質は暗部がつぶれていて、よいとはいえない。音質はラジカセ的(TVはもっと音がいいはずだ)。未公開作品が再DVD化されるのは難しいだろう。すばらしい作品だけに、もうちょっとどうにかならなかったかと思う。