第2部を見る前にDVDで見直してみた。劇場公開版よりも30分近く増え、2時間半の長尺となった。本篇ディスクは2枚にわかれ、1枚目は裂け谷の会議で終わり、2枚目は新たな出発からはじまる。自然な切れ目である。
ディレクターズ・カット版とか、完全版、インテグラル版と銘打ったものには裏切られることが多いが、本作の場合、劇場版よりもDVD版の方がよかった。第2部とのつながり上、復活させた場面が多いというが、流れがとどこおるようなことはなく、人物や世界の描写が分厚くなっている。もともと劇場版は駆足だったので、DVD版が決定版ではないかと思う。
音声解説は字幕つきで、監督&脚本家編、デザイン・チーム編、製作者&ポストプロダクション編、キャスト編と4種ある。
まだ監督&脚本家編しか見て(聴いて)いないが、これがおもしろい。撮影の裏話もあるが、原作をどう脚色したか、DVD版でどの場面をどういう意図で復活させたかの話が主で、作品の構造が見えてくる。
特典ディスクは2枚で、総計6時間。まだ1枚目しか見ていないが、単に長いだけでなく、中味がともなっている。
1枚目は撮影前の準備段階関係。脚本、絵コンテ、絵コンテをビデオに撮って地元の俳優で台詞をつけた紙芝居版、さらに簡単な3D-CGによるプレビュー版、セットと衣装のデザイン、小道具の製作、ロケハンと段階を追って進んでいく。紙芝居版とプレビュー版の一部と、監督自身がビルボを演じたカメラ・テスト版がおさめられているが、事前にここまで詰めていたのである。
『指輪物語』の挿画は多くのイラストレータが描いているが、ピーター・ジャクソン監督はアラン・リーとジョン・ハウの二人の作品を好み、スタッフに招聘する。アラン・リーは英国の小村で世捨人のように暮らしているという。前歯のない顔が愛敬たっぷりだ。
ニュージーランドはロケだけかと思ったら、スタジオ撮影から大道具、小道具、衣装の製作、すべてやっていた。ニュージーランドに二人しかいない美術甲冑師を引っぱってくるとか、映画界のみならず、ニュージーランド文化界の総力をあげたということのようだ。羊よりも人間の方がすくないといわれている国で、こういう映画を作る力があったとはすごいことである(若いスタッフが多かったが、この映画が終わったら、どうなるのだろう)。工房にはリブ・タイラーがちょくちょく顔を見せたそうで、その映像もあるが、漆黒の髪で、普段でもスターのオーラを放っている。
画質・音質はすばらしい。サラウンド感は雄大で、地鳴のような低音がはいっている。呪文やテレパシーの声はリアチャンネルを使うことが多く、ドキッとさせられる。