アメリカ海軍最初の黒人ダイバーになったカール・ブリシラの半生を描いた実話映画。感動作になる材料はたくさんあるのだが……
白人は黒人と同じプールにはいるのを嫌がるという話を読んだことがあるが、1950年代の海軍も同じで、黒人は特定の曜日しか海で泳げないというエピソードが出てくる。水泳ですらそうなのだから、当時は黒人がダイバーの訓練などもってのほかだった。主人公のカール(グッディングJr.)は百回願書を出して、訓練所にやっと入所を赦されるが、中でも執拗な差別をうける。カールをいじめる鬼教官のビリー・サンデー(デ・ニーロ)との間に友情が生まれるのは定石通り。
めでたくダイバーになったカールは海に沈んだ核弾頭を発見するという手柄を立てるが、その直後、事故に遭って片脚を失う。ダイバーとして再起しようとするカールに、海軍当局は退役を迫る。酒に身をもちくずしていたサンデーはカールを励まして、ダイバーとして働けることを実証すべく特訓する。
実話だからしょうがないのかもしれないが、カールが完全すぎて、映画の主人公としての親しみに欠けるのは致命的である。
その分、サンデーが弱さをかかえているのだが、サンデーとその妻(セロン)の場面は大幅にカットされたらしく、第二の主人公というほどの存在感はない。
いい材料をそろえながら、料理の仕方がまずく、本篇よりも音声解説の方がおもしろいという結果に終わっている。なお、出番はすくないが、エリザベス・テーラー風に装ったシャーリーズ・セロンの美しさは一見に値する。
特典のミニ・ドキュメンタリー「真実のマスターダイバー」には、モデルとなったカール・ブリシラ本人が登場する。一芸をきわめた人間の顔をしていて、風格がある。映画の場面なんかいらないから、彼の話をもっと聞きたかった。未公開シーンはデ・ニーロとシャーリーズ・セロンの場面が多い。これが復活したら、別の映画になってしまうだろう(カットする前の3時間15分版がどこまでおもしろいか疑問だが)。
色がこってりのっていて、好き嫌いがあるかもしれないが、画質はかなりいい。音はサラウンドになっているが大味。