まったく聞かない映画なので、劇場未公開かと思ったら、1997年にセゾン系で公開されていた。ケイト・ベッキンセール目当てで見たのだが、予想を越えておもしろかった。名作、といえるのではないか。
英国のカントリー・ハウスを舞台にした怪談だが、怪談として怖いだけでなく、演出が精緻で、映画としても見ごたえがある。なぜ、これがあたらなかったのか、不思議だ。
某映画をパクったといわれている某々映画と似ているが、製作はこちらの方が早いし、その前に原作が出ているから、某映画と某々映画はこの作品か、その原作をパクったのだろう。超心理学の教授がインチキ超常現象のトリックを暴くために、田舎に出張するという趣向も和製某々々映画と酷似。
ケイト・ベッキンセールは1928年時点で自動車を運転する、おきゃんなお嬢様で、植物的な涼やかさは彼女ならではだ。
同じケイトでも、ウィンスレットの方だったら、暑苦しく生臭くなって、不安が徐々に高まっていく妙味は出せなかったろう。ヌード場面が多いが、こちらは明らかに吹きかえである(『レタッチ』で披露した御本人のヌードの方が美しい)。
紅一点のベッキンセールをとりかこむ男たちがまたうまい。インチキ霊能者狩りをしながら、妹が目の前で水死した過去をもち、実は幽霊を信じている教授を演ずるエイダン・クィン、いわくありげな兄を演ずるアンソニー・アンドリュー、温厚な家庭医のジョン・ギールグッドと、英国俳優の重厚な芝居を見ることができる。
残念ながら、画質はよくない。ソフトフォーカスのかかった繊細な画像はもともとDVD向きではないにしても、なんとかならなかったのか。こういうマイナー作品が再テレシネされることはないと思われるので、悲しくなる。音は2チャンネルで、情報量は多くはないが、定位はわかる。特典は日本版予告編だけ。