ハリウッド全盛時代にオールスター・キャストで作られた作品で、これはすごい。
リバイバル時だろうと思うのだが、昔、映画館で見たことがある。口笛の主題曲くらいしか憶えていなかったが(口笛は記憶違いで、ピッコロだった)、DVDで見直してみると、海岸に鉄兜が転がっている場面とか、干草を盛りあげた馬車にレジスタンスが隠れている場面とか、記憶がよみがえってきた。
ノスタルジーを抜きにしても、堂々たる傑作であることは間違いなく、スケール、格調、緩急自在の演出い、役者の柄の大きさ……すべてが傑出している。この作品の前では『プライベート・ライアン』がなんとせせこましく見えてくることか。CGがどんなに進歩しても、こういう映画は二度と作れないだろう。
3時間の映画だが、前半の1時間半は上陸前日から上陸直前までの息詰まる一日を描く。後半は上陸から、アメリカ軍が最大の犠牲を出したオマハ・ビーチを抜くまでである。『プライベート・ライアン』のような皮膚感覚に伝わってくる恐怖はなく、エンターテイメントに徹しているので、安心してみることができるが、英軍がお笑い担当なのはかわいそうである。
モノクロだが、諧調表現が深く、画質は上等。音の方はサラウンドといっていいのかどうか。
特典ディスクにはノルマンディー上陸25周年(映画公開の7年目)を記念して放映された「D-Day Revisited」というTVドキュメンタリーがおさめられている。
キャスターは『史上最大の作戦』のプロデューサーで、20世紀FOX社長のダリル・ザナック。1969年時点のノルマンディーの戦跡を訪れ、映画の場面と対比しながら、各地点の戦闘の戦略的な意味を解説していくのだが、Dデイをよく知らなかったのでおもしろかった。オマハ・ビーチには空爆と艦砲射撃を逃れたトーチカが一基残っていて、そこからの砲撃がアメリカ軍に大損害をあたえたのだという。撮影時点では当時の砲がそのまま保存されていたが、今でもあるのだろうか。
映画の中では説明的な場面はまったくないが、英米では(すくなくとも封切時には)常識に属することなので、不要だっただろう。Dデイに詳しい人以外は、本作を見る前に、このドキュメンタリーを見ておいた方がいい。