自宅の貧弱な機械で見て、どこまでおもしろいか不安だったが、引きこまれた。左右がトリミングされた画面なので、やや異和感があるが、傑作は傑作である。映画館で3回か4回見ているのだが、細部はかなり忘れていたて。
ご存知のように、この映画にはビッグネームが一人も出ていない。だからドラマがないと決めつけるのは間違いで、コンピュータ=人間間の駆引には息詰まるものがある。HALに会話を聞かれないように、ポッドの中で相談するのボーマンらをHALのカメラがじっと凝視し、唇の動きを読みとる場面など、抑制した硬質のドラマはみごとというしかない。
超空間にはいった後は「サイケ場面」といわれることが多いが、当時流行のサイケデリックとはまったく異質の、ロココ的な静謐な美しさをたたえている。ワルツに乗って宇宙ステーションが舞う場面やロケットの端正な内装など、この映画はロココ趣味を基調にしている。未来というと、当時はモダニズムにするのが普通だったし、最近はグロテスクやマニエリスムに走っている。キュブリックの個人的な趣味なのかもしれないが、ロココ的な未来像は、今後も出てこないような気がする。
特典は予告編だけ。画質はデジタル・リマスターということで、傷がまったくない。色調はオリジナルに忠実だと思うが、情報量は多くなく、ややのっぺりしている。この映画こそ、スーパービット版を出してほしい。