封切時に見のがした作品である。エイドリアン・ラインのことだから、ただのチャイルド・ポルノになっているのではないかと思い、ぐずぐずしているうちに公開が終わってしまった。日本版DVDは近々、廉価版で再発売されるというが、特典の豊富な北米版で見た。
ラインはキュブリック版を相当意識していて、同じようなカット割が随所に見られるが、キュブリック版よりも原作に忠実な面がある。キュブリック版はナボコフ自身が脚色を担当したが、時代的制約からエロチックな要素を排除せざるをえなかった。リメイクではエロティシズムの部分を復活させているのである。ただ、キュブリック版より30近く短いこともあってか、ブラック・ユーモアの部分が削られたのは残念だ。もちろん、原作の悪魔的な部分や文学に淫した部分は映像化できるはずもない。
ジェレミー・アイアンズのハンバート・ハンバートがは悪くない。ずるずると少女にのめりこんでいく憂鬱な駄目男ぶりがはまっているが、原作の滑稽味が薄れているので、不満な人もいるだろう。
ロリータのドミニク・スウェインは撮影時、15〜6歳だったはずだが、やけに子供っぽく映っている。これでは犯罪ではないか(いや、最初から犯罪か)。特典のカメラ・テストでは、スウェインはエロティシズムとは縁のない健康優良児だが、エイドリアン・ラインのマジックにかかるとニンフェットのオーラを帯びてくる。ただし、1950年代の少女の雰囲気は出せず、コギャル風である。
ヘイズ夫人のメアリー・グリフィスはキュブリック版のシェリー・ウィンタースそっくりだが、出番はすくない。クエイルのフランク・ランジェロも出番がすくなく、ピーター・セラーズの怪演とは較べるべくもない。
不満はいろいろあるが、原作やキュブリック版とは別の作品と割り切れば、よくできているといってよいのではないか。