ネヴィル・シュートの傑作『渚にて』の二度目の映画化である(邦題は「エンド・オブ・ザ・ワールド」になっているが、原題は原作と同じ"On the Beach")。「完全版」とあるのは、以前、出ていたビデオが1時間短縮した版だったのに対し、DVDは3時間15分のオリジナルをノーカットで収録しているからだ。
某チェーン店の「パクリ! 大げさ! なんでもアリ!!」と銘打った「B級映画特集」にならべられていたが、wad'sで絶賛され、amazonのカスタマーレビューも「感動作
」、「どうか観てください
」、「感動はするが、やや冗長か・・
」、「絶対見て!!
」とすこぶる評判がいい。
『渚にて』は1959年にグレゴリー・ペック、 エバ・ガードナー主演で一度映画化されている。今回はTVムービーなので、ビッグ・ネームは出ていないが、シュートの母国のオーストラリア製作なので力がはいっている。
原作は冷戦のはじまった半世紀前に書かれているが、このリメイク版は2000年製作なので、中国の台湾侵攻で米中戦争が起り、世界中が放射能で汚染されるという設定になっている。今年作っていたら、核戦争のきっかけを北朝鮮の暴発にするだろう(中朝友好協力相互援助条約に自動的軍事介入条項あり)。
原作との一番大きな違いは、原子力潜水艦が核ミサイルを搭載し、核攻撃の主役となった点である。オーストラリア人から見れば、タワーズ艦長も人類を滅亡させた下手人の一人なのだ。
北半球からのモールス信号を電子メールに変えるなど、現代風にアレンジしているが、「核の冬」仮説以前に書かれた原作をもとにしているので、科学的な突っこみどころがたくさんある。原子力潜水艦の内部がちゃちで、作りこみが甘いが、泣かせどころはあざとく押さえていて、お涙頂戴のTVムービーと割りきって見れば値段相当の満足があり、高い評価がうなずける。
画質・音質とも普通。特典というほどではないが、予告編にあたる宣伝用トレーラーがついている。