ポール・オースターの「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」をもとにした映画。脚本はオースター自身が担当し、ベルリン映画祭特別銀熊賞と国際評論家連盟賞を受賞している。
「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」は村上春樹&柴田元幸のベストセラー対談、『翻訳夜話』の中で、二人が競訳している。翻訳のサンプルに使われるくらいだからかなり短く、映画では一番最後のエピソードとして登場する。
「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」は、縁もゆかりもない老女に孫と間違えられたオーギー(カイテル)が、クリスマスなので孫のふりをするという人情話だが、これだけでは2時間の映画にならないので、オースターは人物とエピソードを追加している。
追加されたエピソードも肉親関係の真偽をテーマにしている。第一話では作家(ハート)がラシード(ハロルド・ペリーノ)という黒人の少年を息子代わりに家に住まわせ、第二話ではラシードは12年前に蒸発した父親(フォレスト・ウィテカー)の店で正体を隠して働きはじめる。第三話ではオーギーのところに別れた恋人(チャニング)が訪ねてきて、二人の間の娘(アシュレイ・ジャド)が麻薬にはまって妊娠していると告げる。最後のエピソードはハーヴェイ・カイテルが原作をそのまま語って話芸の冴えを見せた後、モノクロームの黙劇で物語をなぞる。台詞はないが、「おばあちゃん」をやった黒人の老女が印象的だ。
DVDらしいくっきりした映像だが、情報量は多くない。もうちょっといい画質で見たかった。音質も並。特典に「ジュークボックス」というのがあったが、メニューから曲名をクリックすると、その曲が使われている場面に飛ぶだけ。特典の材料がなかったので、苦肉の策といったところか。
DVDとしては不満が残るが、作品がいいので、買って損はない。