DVD公開を前提につくられた『マトリックス』の設定にもとづくオムニバスで、映画館では上映されなかった。たまたま渋谷エルミタージュの特別上映で見たが、さっぱりおもしろくなかった。それなのにDVDを買ったのは、安かったのと、80分におよぶ特典が見たかったからだ。
本篇は期待していなかったが、意外にも見違えるくらいおもしろかった。劇場のスクリーンでは間延びして見えたが、TVの画面では緊張感あふれる絵に一変した。あえて劇場公開しなかったのは意味があって、あくまでDVDで見てくれというのが製作者側の意図なのだろう。
劇場版は英語音声・日本語字幕だったが、DVD版には日本語音声もおさめられている。日本語音声でも見たが、音場感・空間表現とも英語版に引けをとらず、「ビヨンド」や「プログラム」、「ディテクティブ・ストーリー」などは日本語版の方がよかった。
構成は劇場版と若干違っていた。劇場版では「オシリス号最期の飛行」がラストに来ていたが、DVD版では最初に置かれ、劇場版と同じ順にエピソードがつづいた後、最後は劇場版になかった「マトリキュレーテッド」で締めくくられている。劇場版ではエピソードの終りに、そのエピソードを担当したスタッフの名前だけが緑色で流れたが、DVD版では全エピソードのタイトルロールに飛び、全作品のスタッフ名をくりかえし見せられた(DVD製作時の手抜きだろう)。
メイキングと音声解説は、アニメに詳しくない人間にもわかるように作られていて、勉強になった。3DCGアニメが注目される中、ことさら2Dにこだわったそうで、「プログラム」は花札を意識したというコメントには笑った。「絵巻からスクリーンへ」というドキュメンタリーではアメリカのアニメ批評家とアカデミックな研究者が熱っぽくジャパニメーションの歴史を語っていて、ナショナル・ナルチシズムをくすぐってくれる。