普通なら特典ディスクとして付録にするものを、独立の商品として売るなんていい根性だと思っていたが、実際に見てみるとおもしろくて、これなら値段相応の価値があると思った。
『マトリックス』製作の過程を準備段階から公開まで時間順に追っているが、関係者の思いいれと苦労話が適切な距離感で語られていて、作品として成立している。メイキングとしては『ロード・オブ・ザ・リング』スペシャル・エクステンデッド・エディションよりも見ごたえがある。
ウォシャウスキー兄弟は『バウンド』で監督デビューしたが、『マトリックス』三部作の構想の方が先だったという。三部作の企画に興味をもったワーナーが小手だめしに撮らせた低予算映画が『バウンド』だったのだ(低予算といっても、日本の大作2本分だが)。
『バウンド』は傑作だと思うが、あくまで小品である。その程度の実績しかない新人監督に、新技術てんこ盛りで、ベテラン・スタッフすらイメージがつかめなかったという6億5千万ドル(700億円!)の大作をまかせてしまうのだから、ハリウッドはスケールが違う。
本篇がおまけみたいなものだが、さらにそのおまけ映像とジュークボックスがつく。
どれもおまけのおまけにしてはおもしろいのだが、ネット上のファンクラブの面々のインタビューは笑える。『マトリックス』を映画館で何十回も見ているという猛者ぞろいだが、くりかえし見るようになってから契約がどんどんとれるようになったと真顔で語るオバサンがいたりして、新興宗教のノリである。
ウォシャウスキー兄弟が立ち会うゲーム版の製作風景なども興味深いが、俳優のイメージ・トレーニング用にウーピンの直弟子が演じたカンフーの模範演技は一見の価値がある。動きに切れがあり、『アニマトリックス』の「Last Battle」を思わせる超絶技巧に息をのむ。