再公開で見て、その後、名画座でも見ているので、どの場面もおぼえているが、細部まで美意識がゆきとどいていて、DVDでもひきこまれた。
特典のインタビューのうち、ミシェール・ヨーは音声だけだが、画面には出演場面の抜粋が映り、あらためて美しい人だなと思った。神格化されている宋慶齢を「心の狭い人
」、「共産党を認める人を愛した
」、「孫文の死後は、若いのに国母あつかいされて、窮屈な半生を送った
」とばっさり斬ってすてている。メイベル・チャン監督は一見おとなしそうだが、芯の強そうな女性で、編集段階で中国側の検閲と戦い、一年粘ったと語っていた。彼女も宋姉妹のように長期の留学を経験し、中国にもどって戸惑いを感じたが、それが宋姉妹を理解する接点となったという。
この二人のインタビューは短いが、ワダ・エミのインタビューは20分以上あり、現場の熱気を伝えていて、見ごたえがある。単なる衣装とあなどってはならない。場面場面で三姉妹に洋服を着せるか、チャイナ服を着せるかを演出とのからみで精密に計算しているのである。裏話もあって、ヴィヴィアン・ウーは最初、長女の宋霞齢役でオファーされていたが、宋美齢の演説の場面が気にいり、すでに決まっていた宋美齢役の女優を押しのけて役を奪った。宋霞齢役はその後、ミシェール・ヨーになった。宋美齢が蒋介石の外套を着てあらわれる場面を提案したところ、監督は難色を示したが、ヴィヴィアン・ウーの鶴の一声でOKになったという。ヴィヴィアン・ウーの宋美齢は正解だったのだ。
予告編は香港版と日本版がはいっているが、日本版がメロドラマ色を強調しているのに対し、香港版はドキュメンタリー・タッチの歴史劇であることを前面に押し出していて、同じ映画とは思えない。
もともとソフトフォーカスのけぶるような映像で、DVD向きではないが、その点を割り引けば画質は悪くない。音声はステレオのみ。日本語の吹替がついているが、演出が稚拙で聞けたものではない。オリジナルの台詞がいかに繊細かが逆にわかった。