現代的解釈の妖怪時代劇で、公開時はほとんど話題にならなかったが、意外にもおもしろかった。作品評価は☆三つとしたが、☆二つの部分と☆四つの部分が混在しており、均すと☆三つという意味である。
監督の原口智生は特殊メイクの第一人者で、『ガメラ』の特撮陣が中心になっているそうだ。ハリウッド・レベルの場面がいくつもあるが、TVのお子様番組レベルの場面も結構あって、高いテンションが持続しない。監督の「顔」で、部分的に予算以上のものができてしまったということだろうか。
ドラマも同じだ。監督の「顔」で出たと思われるビッグネームがずらりと並ぶが、意外にも手を抜いている人は一人もいず、ノリに乗ったいい芝居をしている。丹波哲郎の大老、塚本晋也の人形師、絵沢萠子の化け猫、藤岡弘の父親、黒田勇樹の奉行、みんな印象に残るかっこいい芝居を見せた。ヒロインを助ける忍者二人組を演じた嶋田久作と逆木圭一郎がまたすばらしかったし、河童でありながらヒロインの弟になる山内秀一は演技賞ものの名演だった。一番すごかったのは巨大モンスターになる松坂慶子で、凄みをおびた美しさは『鎌田行進曲』や『事件』をしのいでいる。
問題はヒロインの安藤希で、黙って立っている分には見るに耐えるのだが、台詞が駄目、殺陣も駄目で、ビッグネームがにいい芝居をしても、テンションが持続しない。記憶に残るすばらしいショットがいくつもあるのに、ブツブツ切れているあたり、大林宣彦の第一作『HOUSE』に似ている(最終的には監督の経験不足が原因だろう)。
特典は力がはいっている。メイキングはよくできているが、松坂慶子のコメントがほしかった。音声解説は、長く特殊メイク畑で活躍していた監督が、裏方仲間の樋口特技監督、尾上特撮技術統括と酒をくみかわしながら語りあうもので、本当の裏話が聞ける。専門用語や人物名に字幕で解説がはいるのはありがたい。予告編集には「日テレ式」のTVスポットや、香港版という珍らしいものがはいっている。
画質・音質ともに良好。音も低予算映画とは思えないくらい凝った部分がある。