1981年に公開されたナスターシャ・キンスキー版『キャット・ピープル』のオリジナルで、40年前の1942年に製作されている。当時、アメリカは太平洋で日本に押されていたはずなのだが、こんなに繊細可憐なホラー映画が作られていたとは。
ナスターシャ・キンスキー版は近親相姦で実事ありと刺激が強いが、こちらは時代が時代だけに、ヒロインでセビリア移民のイレーヌ(シモン)はキスすら拒んでいる。キスをすると、悪い心が起こって、豹に変身してしまうからだ。
故郷の村の化猫伝説におびえるイレーヌに、新婚の夫は催眠治療を勧める。彼は口では優しいことを言っていても、キスさえできないので、同僚のアリスに引かれていき、ついには離婚を言いだす。アリス役のジェーン・ランドルフは、イレーヌ役のシモーヌ・シモンの線の細さとは対照的な肉感的な美人で、屋内プールのシーンもある。
光と影を丁寧に彫琢していて、怖いというよりも悲しい映画なのだが、惜しむらくはヒロインが変身した豹を出してしまったこと。トゥルヌール監督は出したくなかったが、プロデューサーが強権を発動して、別の監督に豹の画像をとらせて挿入したらしい。
特典の解説は一読の価値がある。画質は若干汚れはあるものの、1940年代のフィルムとしては良好な方だろう。