ホラーの古典として名高い1942年版のリメイクで、製作は今をときめくジェリー・ブラッカイマー。
絶世の美女が豹に変身するという以外はオリジナルとは共通点がなく、ほとんど別の話といっていい。オリジナルを思わせるのはプールのシーンくらいか。ナスターシャ・キンスキーの全盛期の美貌が拝める。
封切で見た時は物足りなく感じたが、今、見直してみると傑作といっていいと思う。
特典は充実している。まず、シュレイダー監督による音声解説。
シュレイダー監督のインタビューは二本ある。一本目は完成時にビデオ収録してもので、10分ほど。画質・音質ともに劣悪で、ノイズが多いが、リアルタイムのおもしろさがある。ナスターシャ・キンスキーをヒロインに選んだのは、処女に見える点、謎めいた無国籍性、美しさ、演技力のすべてでAだったからだというが、ナスターシャ・キンスキーとなにかあったらしく、困っているのがありあり。
もう一本はDVD化にあたって収録されたもので、すっかり爺さんになったシュレイダー監督が20年前を振りかえっている。「アメリカン・ジゴロ」の成功で、再びジェリー・ブラッカイマーと組んで、この映画を撮ることになったが、オリジナルと比較されてさんざんたたかれたと恨めしそう。本作のあと、日本で「Mishima」を撮るが、アメリカにもどってみると、映画の製作システムが一変していて、以後、インデペンデント作品しかお呼びがかからなくなったという。彼にとって、本作は予算とスタッフを思う存分使って撮影できた最後の作品なのだ。
この作品では調教不能の豹が重要な役割をはたしており、人間が豹に変身する場面もある。CGはまだなく、撮影はなみたいていではなかった。特殊メイク担当のトム・バーマンのインタビューは手作りSFXの苦労を語っている。アニマトロニクスで動く作り物の豹を用意したが、調教の効くピューマの毛を黒く染めて使ったところ、うまくいったので出番はなかった。変身の場面は一段階づつ撮影したが、ナスターシャ・キンスキーのメイクには4〜5時間がかかった。当時はハード・コンタクトレンズしかなかったので、彼女の目にいれたレンズに絵の具で豹の目を描くという危険な方法をとったという。ブルーバック合成の前後を比較した映像もあるが、今となっては貴重な記録である。
本篇とは関係ないが、オリジナルのプロデューサー、ヴァル・リュートンの思い出を、ロバート・ワイズ(オリジナルの続編の「キャット・ピープルの呪い」を監督)が語ったインタビューもはいっている。
画質・音質は20年前の映画にしては良好。