『白鯨』1956年版

加藤弘一 *[01* 原 題<] Moby Dick
*[02* 製作年<] 1956
*[03* 監 督<] ヒューストン,ジョン
*[03* 原 作<] メルヴィル
*[04* 出 演<] ペック,グレゴリー
*[04*    <] ゲン,レオ
*[04*    <] ベースハート,リチャード
*[05* 製 作<] FOX
*[05* 地 域<] R2、NTSC
*[06  枚 数<] 片面1層×1
*[06  時 間<] 116+3分
*[06* 音 声<] 英語モノ、日本語モノ
*[06* 字 幕<] 日本語、英語
*[06* 画 面<] 4:3
*[07  特 典<] オリジナル予告編
*[08* 作 品<]☆☆☆☆☆
*[08* 特 典<]
*[08* 画 質<]☆☆
*[08* 音 質<]☆☆

 名画として評価が高いが、レイ・ブラッドベリが脚本を担当したことでも有名。撮影は英国でおこなわれたが、飛行機嫌いのブラッドベリは大西洋をヨットでやってきたので、ヒューストンはやきもきしたという。

 ブラッドベリの脚本はエイハブの執念に焦点をしぼって、原作のエッセンスを伝えることに成功している。ピークオッド号はろくに操業しないまま、白鯨を追って地球を半周するようなストーリーになっているが、二時間でまとめるにはこうするしかないだろう。エイハブにリア王を重ねあわせている節がある。スターバックが反乱の根回しをする場面は原作にはないが、リア王を意識したのだと思う。グレゴリー・ペックの演じるエイハブは圧倒的だ。こういう巨大な人物は往年の銀幕スターでないと無理だ。

 スターバック(レオ・ゲン)は原作よりも理知的で、強い性格に描かれており、エイハブの神憑りに船中が巻きこまれていく中で、一人だけ醒めている。原作では、エイハブはスターバックを船に残してモビー・ディックとの最期の対決に臨んだが、この映画ではスターバックは一号艇を指揮しており、エイハブの死を目にすると、それまでの冷静さをかなぐり捨てて、猛然とモビー・ディックに突進していく。原作よりもかっこいい人物に描かれており、最後の見せ場になっている。

 ただ、前半の鯨漁は迫力があったが、最後のモービー・ディックとの対決場面は、今の目で見ると、作り物とわかってしまう。劇場の大画面で見たら、もうちょっとさまになっていたかもしれない。

 イライジャの予言は原作より劇的になっていて、ディレイニーの『ノヴァ』を思わせる。もちろん、ディレーニーの方が、この映画の本歌取りをしたわけだが。

 特典はオリジナルの予告編のみ。画質・音質は並。

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