『蝿男の恐怖』の続編だが、前作とは違って、完全にホラー映画の作りである。監督が違い、フランソワ役のヴィンセント・プライスと警備員役の爺さん以外は、共通する出演者はいない。前作はカラーだったが、こちらはモノクロ。役者は前作より数ランク下で、特にヒロインは魅力に欠ける。舞台はジュネーブのはずだったが、モントリオールに変わっている。物質転送機のセットは前作の使い回し。蝿男の扮装は、モノクロの画面で見ても、前作より退歩している。
前作の翌年の公開だが、十数年後の設定。物語は母親のエレーヌの葬儀の場面からはじまる。成人したフィリップは父親の死の真相をかなり前から知っており、秘かに物質転送機の研究を自分の手で完成させようと心に決めている。母親が亡くなったので、フィリップは伯父のフランソワの反対を押し切り、本格的に物質転送機の研究に着手する。
フランソワの会社のアランという技術者が手弁当で協力するが、実はこの男、本名をロナルド・ホルムズという犯罪者で、物質転送機の設計図を盗みだして、大企業に高く売ろうとたくらんでいる。
物質転送機が完成すると、アランは本性をあらわし、フィリップを気絶させ、物質転送機にいれてしまう。そこに蠅が迷いこみ、フィリップは父親と同じく蝿男になってしまう。まんまと設計図を盗みだすアラン。はたしてフィリップの運命やいかに……。
前作が予想外にヒットしたので、あわてて作った低予算の続編という印象をぬぐえないが、ストーリーはよく練られているし、カメラや照明も悪くない。前作と同じ役者を使って、もっと予算をかけて撮っていれば、方向性が異なるにせよ、かなりいい作品になっていたのではないかという気がする。
特典は予告編集のみ。画質は思いのほかいい。