今月、久々に復刊されたジョルジュ・ランジュランの『蝿』を原作とするSF映画の古典だが、ゲテモノ・キワモノの類だろうと思い、見ていなかった。2枚で1990円のセールをやっていたので、続編の『蝿男の逆襲』といっしょに買っておいたのをようやく見た。
見て驚いた。偶然のいたずらで、蝿男になってしまった科学者アンドレとその妻エレーヌの苦悩をきちんと描いていたのである。リメイクの『ザ・フライ』に近いレベルに達している。原作がしっかりしていることもあるのだろうが、抑制した演出が効いている。蝿男登場の場面は予備知識があったが、結末は不意打ちだった。あれは怖い。
役者はC級ホラー映画でおなじみのヴィンセント・プライス以外は見かけない顔だが、みんなうまい。エレーヌのパトリシア・オーウェンズは品のあるハリウッド・ビューティで、悲劇にみまわれる若妻を好演している。
画質は1958年の作品にしてはいい。「総天然色」らしいケバさはあるものの、くっきりしていて、ノイズはすくない。音は4.0チャンネルだそうだが、広がりは感じなかった。特典は関連作品の予告編だけ。