事故で四肢不随になった元鑑識部長、リンカーン・ライム(ワシントン)が部下たちを自在にあやつって連続猟奇殺人を解明していくサスペンス・ホラーである。病室を捜査本部にして現場の警察官に指示を出すなど現実にはありえないが、映画はパロディ路線ではなくシリアス路線を選び、スピード感で押しまくって、すっかり術中にはめてくれた。コンピュータと無線で武装した、ハイテク・ロッキングチェア・ディテクティブの登場である。
ロッキングチェア・ディテクティブは作家にとってだけでなく、俳優にとっても一度は挑戦してみたい設定だと思うが、デンゼル・ワシントンは技巧に走らず、直球勝負で挑んでいる。スピーディーな展開でもっている映画だけに、この選択は正しかった。
ライムの手足となって捜査にあたるアメリア・ドナヒーはアンジェリーナ・ジョリーが演じているが、彼女がすばらしいのだ。「17歳のカルテ」の不敵な眼差しとは対照的な、傷つきやすいフェミニンな目がたまらなく魅力的だ。これまでの彼女の作品で一番よかったと思う。
脇は脇に徹していている中、看護婦のセルマが目立った。セルマ役のクイーン・ラティファはラップで有名な人だそうだが、こういう人に看護してもらえたら、病院生活も楽しいだろう。
メイキングは定番。アンジェリーナ・ジョリーについて語る人は、みな「ジア」を絶賛している。暗い場面が多く、映画館で見たかったと思うが、画質は悪くない。音はよく回る上に低音成分がたっぷりはいっており、リア・スピーカーとサブウーファーが活躍する。
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