封切時に見ているが、吹替を工藤夕貴自身がやっているというので見てみた。TVの海外ドラマでおなじみの声優陣がいかにもTV的に吹きかえている中、ヒロインのハツエだけ、子供時代(鈴木杏)も含めて俳優本人がやっているが、これは失敗だった。上手下手の問題ではなく、芝居の質が違いすぎて、浮いてしまったのだ。
さらに吹替の録音の問題だが、台詞全体が音場に溶けこんでいない。サラウンドがうまく効いている作品だけに、これは致命的だ。
途中でオリジナル音声に切り替えたところ、あらためていい映画だと思った。
ナチスを断罪してきたアメリカが、ナチスと同じようなこと(鞄をさげた日系人の群が強制収容所に送られる場面は、ユダヤ人ものでおなじみの場面にそっくりだ)をやっていたという事実を掘りおこした以上、興行的成功は難しくなったが、こういう映画に出演してくれたマックス・フォン・シドーとサム・シェパードの心意気を貴重に思う。
メイキングは悪くないが、マンザナール収容所の映像を出してほしかった。