封切時にはほとんど話題にならず、見逃している。今回、はじめて見たのだが、これは傑作である。スティーブン・キング原作の映画の中では『ショーシャンクの空に』と並ぶ出来で、もっと評判になっていい。
いきなりショッキングなシーンからはじまる。キャシー・ベイツ主演だし、同じキング原作の『ミザリー』の連想でホラーかと思ったが、音声解説によるとこれも監督の計算のうちである。
ニューヨークで新聞記者をしている娘のセリーナ(リー)がかけつけてきて、母娘の葛藤をつうじて、今回の事件と20年前の事件の真相がすこしづつあきらかになっていくが、過去と現在の交錯がみごとだ。原作(未読)は主人公のモノローグ仕立だそうで、映画の方が作品として深くなっていると思う。
終始キャシー・ベイツの存在感が圧倒するが、ラスト、ジェニファー・ジェイソン・リーがキャシー・ベイツを食う芝居を見せる。二大女優の名演が堪能できた。
特典はハックフォード監督の音声解説ぐらいだが、これがいい。静かな口調で淡々と語るが、緻密な思考過程を披露してくれる。
画像は悪くない。北の海に浮かぶ島の寒々とした風景が美しく、東海岸と西海岸という違いはあるが、『ヒマラヤ杉に降る雪』に通じるものがある。