『紅楼夢』は何度も映像化されているが、中央電視台が1984年に放映した36回のシリーズが一番評価が高いそうだ。関連書籍などは20年たった今でも入手可能のようで、出演者の近況を伝えるページまである。中国では36枚組VCDとVHS14巻という形で広く流通していが、日本でがVHS12巻の完全版と、VHS3巻の抜粋版が出ている。
DVD版はVHS3巻の抜粋版をもとにしており、ディスクは上中下と特典ディスクの4枚にわかれる。上は秦可卿の葬儀まで。中は賈宝玉が父親から折檻されるまで。下は林黛玉の死まで。特典ディスクはメイキングやインタビューではなく、VHS3巻版に含まれなかった最後の2回分を再編集したもので、賈家の没落と賈宝玉の出家を描くが、120回本ではなく、幻の100回本をもとにしていた。もちろん、獄神廟も登場する。VHS3巻版しか見ていない方は、ぜひDVD版か、14巻版をご覧になることをお勧めする。
オリジナルの結末は岩波文庫版第8巻の「曹雪芹原作の八十回以後について」などに紹介されているが、いきなり絵で見せられたので、衝撃はいっそう大きい。友人知己が手のひらをかえす中、劉婆さんが王煕鳳を獄神廟を訪ねてくるくだりは涙、涙だ。
120回本よりも絶対にこちらの方がいいが、清朝全盛期にこんな体制批判の話が書けたのだろうかという疑問もないわけではない。もちろん、危ない話だから、100回本が失われ、一族の悲劇を宝玉と黛玉の悲恋に矮小化した120回本が作られたという見方もできるわけだが、最近、中国では100回本の基本資料となっている脂硯斎評を偽書とする説が出てきて、大論争になっているという(エディトリアルのJan31 2004を参照)。真相はどうなのだろう。
気になる金陵十二釵だが、女優の色がつかないように、無名の新人をオーディションで選んだそうで、どの役もなるほどという顔をしている。写真の毛皮の帽子をかぶった美女は王煕鳳役の鄧婕。賈宝玉役の欧陽奮強は藤原竜也に似ていなくもない。
中味はすばらしいのだが、VHS版をそのままDVD化したらしく、画質は最低レベル。字幕は焼付で、歌謡の場面に原文が字幕ではいるが、日本語字幕がかぶさって見えない。音もお粗末で、2枚目のディスクはところどころにハム音(!)が混入している。VHS14巻版もこんなものなのだろう。画質・音質がここまでひどくなければ、すぐにでも14巻版を買うところなのだが。