武侠電影電視によると、金庸の『書劍恩仇録』は1960年以来、映画化が4度、TV化が3度おこなわれているが、このDVDは1981年に香港のショー・ブラザースが製作したもので、2度目の映画化にあたる。早口の北京語音声だけだが、原作を読んでいたし、英字幕がついているので、どうにかついていけた。
原作は4巻の長編で、一年間の大河ドラマになるくらいの内容をもっている。いくら早口でも1時間41分でおさまるはずはなく、3巻目冒頭の陳家洛が西域に旅立つ場面で終わっていて、最大の見せ場である西域の会戦場面はない。
香港映画はよく知らないが、狭いスタジオに貧弱なセットをちまちま作っていて、内輪で安く作っているなというのが正直な感想である。ただ、つぼは押さえていて、限られた空間を飛んだり跳ねたり賑やかで、プログラム・ピクチャーとしてはよくできている。
『グリーン・デスティニー』と較べてもしょうがないが、とにかく安っぽい。ただ、安っぽさに居直っている部分もあって、乾隆帝に扮した白彪はコメディ系の人らしく、拉致されて陳家洛の部下たちにからかわれる場面は笑える。
特典の「星光傳奇狄龍」というインタビューはこのDVDのために撮ったものらしく、中年のオヤジになってもトレーニングを欠かさない最近の狄龍の姿を見ることができる。「幕後花絮」はメイキングかと思ったら、撮影風景のスチル集だった。楚原監督がランニングに短パン姿で、役者に演技をつけている写真もあって、いかにも家内制手工業という感じだ。「原装海報」はオリジナルのポスター画像、「電影簡介」は200字ほどの簡単なプロダクション・ノート。監督と役者の紹介文書もある。
1980年代の映画のDVD化としては画質・音質ともに良好で、こだわりが感じられる。特典といい、ハマー・フィルムのDVD化に通ずるものがある。