1958年製作の『蝿男の恐怖』のリメイク。ぞっとしない話なので、オリジナルも、リメイクも見たことがなかった。ジーナ・ディヴィス目当てで見たというのが正直なところだ。
案の定、グロテスクな映画だったが、これは傑作である。信じられないことに、ラブストーリーとして成功しているのである。オリジナルは未見だが、多分、こちらの方がすぐれているのではないか。
主人公のセス・ブランドル(ゴールドプラム)は一昔前ならマッド・サイエンティストですんだが、現代では大企業に囲われたオタク科学者で、生物にうといために、彼の作ったコンピュータも生物の特性を理解できず、動物の転送に失敗している。だが、生気あふれる女性ジャーナリストのロニー(デイヴィス)とつきあうようになり、人間性に目覚め、ついに動物を転送することに成功する。
ここから悲劇がはじまるのだが、ドラマ構成が緻密で、物質電送という非現実的なテーマにもかかわらず、主人公二人の心の動きにリアリティがある。脚本と演出の勝利だが、ジーナ・デイヴィスの演技も特筆すべきだ。
画質は標準。音はよく拡がる。特典のインタビュー集はメイキングと重複する。ジーナ・デイヴィスは本作がはじめてのシリアス作品だそうだ。
かなり当たった映画で、1989年には続篇、『ザ・フライ2/二世誕生』が公開されている。オリジナルの映画の方もDVD化されている上に、続篇の『蝿男の逆襲』をカップリングした『蝿男シリーズ DVD-BOX』まで出ている。リメイクのリメイクが進行中という噂まである。絵になる作品なので、根強い人気があるのだろう。
ジョルジュ・ランジュランの原作は昔、早川書房でスタージョンの『一角獣多角獣』やブラッドベリの『メランコリの妙薬』と同じ、貼箱にはいった新書判の「異色作家短編集」から出ていたが、一度文庫化されたものの、絶版がつづいている。読んでおけばよかった。
追記: ジョルジュ・ランジュランの『蝿』は2006年1月に復刊された。