となります。三番目にHTML化した上司小剣「鱧の皮」(電子文藝館用にHTML化したものを、背景色を変えて「e文具案内」に掲載しています)、四番目にHTML化した徳田秋聲「或賣笑婦の話」はこのルールでマークアップしています。4.246 小説・児童文学は章節の区切、もしくは一行開きによる区切までを一ブロックとし、クラス名
を指定する。
最初に自分の作品のサンプルを見た際、なぜ秦さんが「段落ごとに機械的に一行開くなどという設定を気儘にもちこんだ」ことに気がつかなかったのか不思議に思う方もおられるでしょうが、理由は簡単で、当時のスタイルシートでは<p>の上下マージンをゼロに設定しており、「機械的に一行開」いてはいなかったからです。* 終日雨で冷え冷え。文藝館に困った問題が起きていた。マークアップした方法で原稿を再現すると、例えば、私の小説が段落ごとに一行開きで出てくるのだ。創作の場合、どこかで一行開きを作ることはよくあり、だが、何処でどう開けるかはかなり苦心して決める。一行開きも「表現」なのだ。それが、機械的に一律に段落ごとに一行開きされては、作品そのものが電子メールのようなことになってしまう。読みやすいからという問題意識を全面否定はしないが、創作は作者のもので、作者に断わり無く機械的に一律にそれをやるなど、非常識な暴挙であり、機械的な操作を作品よりも優先してしまった本末転倒そのもの。こういう事になっているとは、機械の組み立てというか、 HTML言語がどうでこうだか理解仕切れないが、目の前の作者に断わり無くそれをやっていたのが、文学に無縁の業者ではなかったので、わたしの驚愕は大きかった。私の作品は、直ちに私の方法で原稿を作り直し、差し替えることになる。これが、他の著者・作者の原稿にも及んでいるとなると、由々しい事態になる。
底本に従った原作の同一性保持は著作人格権の基盤であり、いかなる再現にも可及的誠実に守られねばならない。むろん、正字が略字にされた底本もあるし、現代仮名遣いに変えられた底本もある。社会的慣行であり、研究者用のテキストではないから、それは、此処では深く問わない。機械環境の制約でオドリ記号も用いられない以上、「いろいろ」と直したり、ルビも「侃々諤々(かんかんがくがく)」という風に新聞方式を使わねばならなかったりすることは、有る。(ルビはふれるのだけれど、その為に行間がバラツクという版面の見苦しさが、今の機械環境では出てしまう。)
だが、一行開きなどは、忠実に原作に従える簡単なしかも大切な「表現」なのである。どうして、段落ごとに機械的に一行開くなどという設定を気儘にもちこんだものか、理解に苦しむ。
電子文藝館はまだ開館していないわけで、準備段階でいろいろ手直しがあるのは当たり前のことですし、小説四篇のうち、「嵐」以降の三篇では問題が解決していることを何度もご説明しているのに、その点に言及しないのは、いかがかと思います。
加藤@ほら貝です。
今、秦さんの日記の18日の項を読み、まだ誤解されているので、
再度ご説明します。個人的にメールをさしあげようかとも
思ったのですが、マークアップについての内容を含みますので、
このMLを使わせてもらいます。
まず、「一行開き」が文学表現として重要であることをわたしが
ないがしろにしたかのように考えておられるようですが、それは
事実と異なります。
「電子文藝館マークアップ規則」に
> 4.246 小説・児童文学は章節の区切、もしくは一行開きによる区切までを
一ブロックとし、クラス名を指定する。
と明記しましたし、ソースをご覧になればわかるように、
「嵐」以降の三篇の小説は上記ルールにしたがって
マークアップしてあります。
「一行開き」が文学表現として重要であることと考えるから、
わざわざこのようなルールを作ったのです。
単純なルールに見えるかもしれませんが、ここにたどりつくまでには
いろいろな試行錯誤をやっています。
「嵐」については、タグやスタイルシートをいろいろ変えて、
表示体裁を調整する作業を長時間やっていますから、
その過程で、どこかの一行開きが飛んでしまう事故が
ないとはいえませんが、その点は校正で直していただきたいと思います。
「鱧の皮」と「或賣笑婦の話」は機械的に変換していますから、
わたしの段階で一行開きがなくなるという事故はないはずです。
「清経入水」 は小説としては最初にマークアップしたもので、
試行錯誤の最中でしたから、上記ルールにはしたがっていません。
すぐに作り直さなかったのは、前々便でご説明したように、
マークアップ規則を変更する可能性があったからです。
申し送りに不備があり、秦さんにご不快な思いをさせてしまった点は
お詫びしますが、一行開きを無視したとか、意図的に秦さんの作品を
改竄したというようなことはありませんので、このメールを日記に
転載いただければと思います。