ヘンリー・ジェイムズの『ある夫人の肖像』のをBBCがTV化した作品で、1968年に放映されている。
35年前のTVドラマだから、多くを求めることはできないにしても、お粗末すぎる。ジェーン・カンピオン版を見た後ということもあって、冗談としか思えない。
ほとんどがスタジオのセットなのだが、安物のテーブルに椅子、作り物の柱、蔦を貼りつけて壁に見せかけた衝立と、ありあわせの大道具でやりくりしている。衣装も出来あいのものらしく、安っぽい上に、役柄とあっていない。主演のスザンヌ・ネヴィも不満を感じていたのだろう、本物の庭園を使ったウォーバトン邸の場面だけ、妙に演技が生き生きしていた。
ディスクは2枚組で、それぞれ120分づつ収録されている。1枚目はオズモンドとの結婚まで、2枚目は結婚以後で、原作を忠実に脚本化しているようだ。わかりやすいことはわかりやすいが、平板で、退屈してくる。
台詞はゆっくりで、発音がはっきりしているので、語学教材として使えるかもしれない。ただ、教材としては英字幕がないのが痛い。
画質は極悪。IVCは10年前の3倍速ビデオ並みといわれているが、まさにそのレベル。ドロップ・ノイズが頻発する上に、色が抜けている。ここまでひどいと、家庭用ビデオをマスターにしているのではないかと疑いたくなる。音質もハイファイ以前のVHS三倍速並み。この程度だったら、ディスクを2枚にわける必要はなかったのではないか。
特典は英文学者の解説が文書としてはいっているが、百科事典のレベル(文庫版の解説の方がはるかに詳しい)。