Oct24の項でとりあげたAmazon.comの書籍全文検索サービスが波紋を広げている。
まず、予想通り、本が売れなくなるという声明を出した著者団体があらわれた(CNET)。声明を出したのはオーサーズ・ギルドで、売行が伸びる本があることを認める一方、「参考図書の大半は、こうしたデータベースによって間違いなく危険に晒される。(ほぼ全てといわないまでも)多くの旅行ガイドブックや料理本もそうだ
」と批判し、ある本から「Search Inside the Book」を使って、連続した108ページ分を実際にプリントアウトしてみせた。
Amazon.comはただちに機能の見直しをおこない、印刷機能を凍結した。オーサーズ・ギルドは10月31日付の声明で、Amazon.comの対応を一応評価しながらも、多くの著者は出版契約にもとづいて「Search Inside the Book」から自著を削除させる権利をもっていると強調している。
追記:CNETの「検索結果を印刷できなくなった、米Amazonの全頁検索」とZDNetの「Amazon、書籍全文検索サービスの印刷機能を停止」参照。Amazon側はオーサーズ・ギルドの批判と機能凍結の関係については口を閉ざしているというが、オーサーズ・ギルド側のいうように、批判に応えたものと考えるのが妥当だろう。(Nov06 2003)
Amazon.comはどのような根拠で「Search Inside the Book」を提供しているのだろうか? なんと、Amazon.comは著者の了解をうる必要はないと考えているのである。
Wiredの「The Great Library of Amazonia」という記事(長文を読むのがつらいという人は梅田望夫氏の要約をご覧になるとよい)は、Amazon.com副社長で情報処理の専門家でもあるウディ・マンバーに取材し、次のような回答を引きだしている。
Amazon.comの解決法は大胆だ。同社は電子図書館を構築したわけではないというのだ。「これは電子本のプロジェクトではありません!」とマンバーは語る。ある意味で、彼は正しい。アーカイブは意図的に制限をくわえられている。検索結果はテキストではなく、画像――ページの画像――で返ってくる。検索でひっかかったページと、前後の数ページを画面で読むことができるが、保存することはできないし、本を最初から最後まで通して読むこともできないのだ。
Amazon.comは「Search Inside the Book」を「カタログ」と考えているのである。単なる「カタログ」なので、著者の了解をうる必要はないというわけだ。実際、「Search Inside the Book」では閲覧できるページ数に上限が設けられている(一ヶ月あたり千ページ、同一の本は総ページ数の20%以内)。「カタログ」という言い分には一理あると思うが、異論のある人もいるだろう。
ZDNetによると、サービス開始一週間の売上を調べたところ、検索対象となっている書籍の売上は、そうでない書籍に較べて9%伸びたという。9%という数字がずっとつづくかどうかはわからないが、半分の5%だとしても瞠目すべき数字である。本との新たな出会いが実現したわけで、読者にとっても、著者・出版社にとってもプラスではないか。
ただし、レファレンス的な本を出している著者・出版社にはまったくメリットがない。梅田望夫氏によると、コンピュータ関係の出版で実績のあるオライリー社は「Search Inside the Book」に参加をみあわせている。
検索の雄、Googleの動きも見逃せない。CNETとZDNetは速報だけだが、Publishers Weeklyはかなり詳しい。Googleは書籍全文検索サービスをはじめるために、いくつかの出版社と交渉中で、すでに6万冊以上の本を確保しているという。Googleの場合、本を売ることが目的ではないので、通常の検索結果といっしょに本の抜粋が表示される形をとると見られている。
本のスキャンはどのようにおこなわれたのだろう?
Wiredによると、Amazonはインドやフィリピンのような人件費の安い国でスキャン作業をすることで、コストを1冊あたり1ドル以下に下げたという。12万冊でも1500万円そこそこでできる計算だ(スキャンに使った本は売物にならなくなるので、本代が10倍くらいかかっているかもしれないが)。さすが民間企業で、同じことを公的機関がやったら一桁か二桁余計にかかるのではないだろうか。
こういう恐るべきサービスが現実に稼働しているのを見ると、公貸権がどうのこうのという議論が馬鹿馬鹿しくなってくる。
10月31日、オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫被告の7年がかりの裁判が結審した(Mainichi INTERACTIVE)。
松本被告は今回も「入廷直後、後ろにいた弁護人から話しかけられると、机をけって大きな音を立てた
」という態度だった。TVでは遺族代表が、松本被告自身が事件の真相を語るべきだったと怒りをあらたにしていたが、10月26日付YOMIURI ON-LINEによると、松本被告は弁護士との接見で自ら進んで事件について語っていて、数百時間分、A4版で数十ページにおよぶ接見メモが残されているそうである。
接見メモがとられたのは1995年11月頃から、公判の進め方をめぐって弁護団と決裂する1997年4月頃までで、この時点ではまだ「まともな話
」をしていたという。YOMIURI ON-LINEから引く。
〈私がしっかりと止めておけば、こんな事件(地下鉄サリン)は起きなかったと思う……井上(嘉浩被告)が『徹底的にやるしかない』と言っていた。私の意見は通らなくなっていた〉
〈(坂本弁護士一家殺害では)弟子たちが『尊師、やらして下さい』と言ったので『やめとけ、やめとけ』と答えた……遺体をどうするかという話があったが、私は(かわいそうだから)『3人一緒に埋めてやってくれ』と言った〉
〈(松本サリン事件の謀議では)気分が悪かったからイスに座って頭痛に耐えていた。弟子たちの話し合いの結果は、コスモクリーナーの音で聞こえなかった。これは実験して下さい〉
証拠として最低限必要な被告本人の署名押印がないので、公判の場には一切持ちだせず、永遠に封印するしかないというわけだ。
松本被告が「黙秘」をつらぬいたことを精神力の強さと解釈する人がすくなくないが、さてどうだろう。弁護団と関係がよかった頃は「しきりに、教義や世間話もしたがっていた
」というだけでも、精神力説はかなり怪しくなる。
弁護団との関係が悪化するきっかけとなったのが、井上嘉浩被告の反対尋問をつづけるかどうかという点だったという点も精神力説に疑問をいだかせる。松本被告は裁判が不利になるのを承知で、井上被告に対する反対尋問の中止をもとめたが、それは最も忠実な弟子の口から、自分を批判する言葉を聞くのが耐えられなかったからだろう(英語もどきの独言を法廷で呟くなど、「不規則発言」が本格化したのもあの頃からだった)。井上被告の証言で自己愛をずたずたにされた松本被告は、自分を無視して尋問を続行した弁護団と決裂した。それだけのことではないのか。
マスコミの総選挙予想が一斉に発表された。自民が単独過半数確保、民主は伸び、公明現状維持、社民・共産・保守惨敗という線でどこも一致している。代わり映えしないので、一番長く残りそうなMainichi INTERACTIVEだけリンクしておく。
ネット上では眉唾なものもふくめて、さまざまな予測というか憶測が飛びかっている。中でも興味を引かれたのは「週刊アカーシック・レコード」の「「民・公連立」の密約 」だ。次の条に注目したい。
03年10月27日放送の『スーパーモーニング』で評論家の森田実は「民・公連携」の動きがあると言ったのに、同日夜の同局の『ニュースステーション』では、森田実のVTR出演場面では、その下りはカットされていた。
森田によると、公明党は自民党の将来に不安を持っているという。
ここ数年連立政権を組んで選挙を一緒に戦ってみて、公明党は自民党の組織力が日に日に衰退しつつあることを悟り、自分たちの将来をこの党に預けるのは危険だと感じ始めた。そこで今回の衆院選では、大阪などいくつかの選挙区で、公明党の支持母体の創価学会(タテマエ上は公明党と別組織)が民主党候補を応援するケースがあるというから、すでに「民・公連立」の布石は打たれているらしい。●新潟5区の怪●
森田がもっとも決定的な「民・公連携」の証拠として挙げたのは、新潟5区だ。
ここには、白川勝彦元自治相が立候補を表明し、民主党の推薦または公認を受ける予定だった。が、03年9月に田中真紀子が秘書給与詐欺事件をめぐって東京地検で不起訴になり、5区から立候補しそうになると、民主党執行部は急に白川の推薦、公認を躊躇するようになり、結局、公示の前日になっても岡田克也幹事長が「田中(真紀子との連携)問題を含めた総合判断」と称して推薦・公認を先送りするありさまだった。
白川勝彦氏が反創価学会の急先鋒であることは言うまでもない。森田氏の上記コメントは朝のワイドショーでは流れたが、ニュース・ステーションではカットされたという。発言カットがその筋の圧力によるものかどうかはわからないが、白川公認問題が注目すべき徴候であることは間違いない。
数日前、東京18区で鳩山邦夫氏が菅直人氏を追いあげているという見出しを見かけて、気になっていたのだが、「あいふる世相ダイアリー」の11月2日の項では鳩山氏の地盤の小金井の状況が伝えられていて生々しい。
「いくら鳩山とは言え、菅直人に勝てるわけないぢゃん」と思っていたが、今日、演説会に行ってみて「これは面白くなりそうだなあ。もしかして鳩山さんが勝っちゃったりして…」と、思ってしまった。
それにしても必死なのが自民党。どうせクニオは比例二位なんだから余裕だろ? という見方があるが、恐らくそれは的外れ。この前の国分寺の時は、自民は負けるのを見越していて、ある意味余裕があったが、今日の小金井を見る限り、そのような雰囲気は全くなく、彼等は本気で勝つつもりらしい。
確かに、この地で菅候補を負かした場合、自民党にも鳩山候補にも限りないメリットがある。まず、比例重複無しの菅党首は議員でなくなるのがデカイ。仮に総選挙全体として自民が敗北したとしても、ここで勝つだけで、それが帳消しになるほどの威力がある。鳩山候補にとっても大金星というような表現では足りぬほどの名声を(自民内で)得ることができ、環境革命なりお年寄りのグループホームなりがやり易くなるであろう。また、長年地元から議員を出せず、地元市議会でも弱い小金井支部は恨みつらみが溜まっている。彼等にとって小選挙区で勝つことは悲願であり、鳩山カードで雪辱を晴らそうと、ギラギラしている。
小金井市は中央線工事による踏切問題が一番深刻な地域で、踏切問題が総選挙の一番の争点になっているのだそうである。ひょっとしたら、ひょっとする?
追記:新聞の予測では鳩山候補は比例二位がたたり、終盤で失速してしまったという。なんだ、つまらない。(Nov08)
Wiredに「LEDが持つ驚異の治療効果とその謎」という驚くべき記事が出ている。赤外線LEDの光をあてるだけで、傷の治りが早くなったり、筋肉が増強したり、糖尿病の合併症が改善したり、失われた視力が回復したりするというのだ。
オカルトかと思ったが、NASAや国防総省、数十の病院が10年以上前から臨床試験をつづけており、すでにFDAが認可した医療用LED照射器が老人ホームや病院、軍隊で使われているというから、本当なのだろう。訓練で負傷した兵士に照射したところ、回復率が40%以上も向上したとか、LED光を1度照射しただけで、筋肉細胞のDNA合成が5倍増えたとか(NASAは無重力状態で生活する宇宙飛行士の筋力維持に使おうとしている)、目を見張るような結果が出ているそうである。
なぜ効果があるのかはまだわかっておらず、ミトコンドリアを活性化するとか、血管を拡げるとか、諸説あるとのこと。
健康情報には敏感なつもりだったが、この話は初耳である。検索したところ、ニキビ・シミ・シワ治療機や、レーザーメスの代替品がひっかかったが、Wiredがとりあげているのとは別物のようである。青色LEDで癌細胞の増殖が抑制されるという説も見つかったが、Wiredのは赤外線だから、これも違う。
680〜880ナノメートルの波長のLEDが効くそうだが、ということは、秋月で千円で売っている「赤外線発光ダイオード使用赤外線投光器キット」でもいいということか。こんなことで筋肉量が増やせるのなら、究極のダイエット法になるだろう。
ZAKZAKの「10代女性からこのウイルス検出割合が高いワケは…」によると、B型肝炎が10代と20代の女性に蔓延していて、10代が人口10万人あたり3.89人と全年代中第一位、20代が2.81人で二位と高率を示している。一番低かったのは50代の0.51人だから、10代の女の子は7倍も罹患率が高いことになる。
男の10代は1.47人で平均だが、20代は3.24人で、0.34人の40代の10倍近い比率である。
母子感染や注射針の使い回し、輸血などによる感染はほとんどなくなっているから、性行為が原因と考えざるをえず、専門家は「エイズの爆発的拡大の前兆
」と警鐘を鳴らしているという。これはえらいことだ。
ZDNetの「国連報告「大半の電子政府が無視されている」」によると、4日、国連は「E-Government at the Crossroads」(岐路に立つ電子政府)という報告書を発表した。
国連加盟191ヶ国のうち、91%にあたる173ヶ国がWWWサイトを開設するようになり、完全オフラインの国はアフガニスタンなど18ヶ国に減ったという。
もっとも完備した情報を国民に提供しているのはアメリカで、以下、スウェーデン、オーストラリア、デンマーク、英国、カナダ、ノルウェー、スイス、ドイツ、フィンランドとつづく。アジアではシンガポールが12位、韓国が13位、日本は18位。
一方、国民の提言をうけいれる手段としてネットを使っている国は15ヶ国にとどまる。首位は英国で、アメリカ、ニュージーランド、フランス、オランダ、アイルランドとつづき、チリ、エストニア、フィリピン、メキシコ、アルゼンチンといった発展途上国が含まれる。
途上国の電子政府プロジェクトのうち、すくなくとも60%が失敗しており、約半数が一部税金の無駄遣いに終わっている。そこから、報告書はいきなり大掛かりなプロジェクトに手をつけず、地味にはじめるといいと結論しているという。
なるほどとは思うのだが、この報告書、ネット公開されているのは要約だけで、全文を読むには紙媒体を25ドルで購入しなくてはならない。Oct30でとりあげた日本規格協会のバリアフリー・ウェブコンテンツ規格もそうだが、公的機関の報告は発表方式が発表内容を裏切っているケースが目につく。
電子政府・電子自治体がらみではAsahiパソコン11月15日号に「自治体情報、アウトソーシングの恐るべき実態」という記事が載っている。すくなからぬ自治体が人材難と予算不足から、個人情報の入力と管理を民間企業に丸なげしている実態を荒川区の事例を中心に紹介したものだが、前々から指摘されていたこととはいえ、唖然とした。
荒川区が民間委託している業務の一覧表が載っているが、税務全般から心身障害者手当、福祉手当、紙おむつ支給、人工肛門等装具購入費助成、住宅改造費支給、福祉電話助成、自動車燃費助成、ひとり親家庭助成、心身障害者・知的障害者施設費用徴収、家賃助成、外国人登録等々、百項目を超えている。住民票も入出力は職員がおこなうものの、バックグラウンドのシステム構築と運用は民間業者に委託されている。荒川区情報システム課は取材に対し、「職員側にITの専門知識がなく、限界があった。システムや機器もちょうど更新時期を迎えていた
」と語ったという。
住基ネット論議の際、推進派は住基ネットに流れるのは基本4情報だけで(実際は13情報)、本当にクリティカルな個人情報は庁舎内から出ないとしていたが、そのクリティカルな個人情報が民間業者に丸なげされているわけである。千代田区、福島県喜多方市、埼玉県八潮市、大分県臼杵市でもアウトソーシングが進んでいて、千代田区にいたっては、すべてのサーバーを庁舎から撤去してしまったという(!!!)。
記事は「もし民間が役所程度に秘密が守れるのなら、役所や公務員なんていらないといえる
」と結んでいるが、これは痛烈な皮肉である。
コンピュータのわからない無能公務員に高給を払っているから、こうなるのだ。中核業務を民間業者の傭う安月給のアルバイトにまかせていたら、個人情報漏洩が日常化するのは目に見えている。いくら契約で守秘義務をうたっても、経済的裏づけがなければ口先だけに終わる。一般部門は安いアルバイトでかまわないが、プライバシーにかかわる部門はしかるべき身分保障をした人間に担当させるべきだと思うが、現実は逆の方向に進んでいるらしい。
日本書店商業組合連合会の全国書店新聞に「「図書館貸出調査」まとまる」という記事が出ている。
日本図書館協会と日本書籍出版協会が10月22日に発表した図書館の貸出と複本購入状況の調査結果を紹介したもので、ようやく議論の土台となるデータが出てきたことになる。
調査は今年7月におこなわれた。公共図書館の1/4にあたる427自治体・679図書館から有効回答があったという。記事から引く。
自治体種別に所蔵冊数を見ると(表2)、文芸ベストセラーの1館あたり平均所蔵冊数は、政令指定都市が4・2冊、村が1・0冊で、複本は大規模な自治体で数が多くなっているが、人口1万人あたりの数字になると政令指定都市0・31冊、村1・52冊と逆に町村の図書館の方が多い。
文芸ベストセラー以外のタイトル種別も同じ結果となっている。
また、貸出冊数(表3)も所蔵冊数と同様の傾向を示しており、文芸ベストセラーの1館あたり平均貸出冊数は、政令指定都市133・2冊に対して村19・9冊となっている。
全国図書館での推定所蔵数を発行部数で割った「図書館購入率」は、『五体不満足』0・3%をはじめ取次ベストセラーのほとんどが1%を割り込んでいるが、芸術選奨の『黄色軍艦』25・6%など文芸・教養分野で定評ある賞を受けた書籍は高い数字。
ある本を読者が書店で買わず図書館で借りた割合を示す「図書館提供率」は貸出数を「発行部数+貸出数―所蔵数」で割って算出。
99年直木賞受賞『柔らかな頬』47・3%、99年芥川賞受賞『夏の約束』44・3%、99年ベストセラー『沈まぬ太陽』38・8%等、話題作を買わず借りる読者の存在が浮き彫りになった。
ベストセラーの図書館提供率が40%台と高率を示していることは、作家側の懸念を裏づけるものといえよう。公貸権論議が騒がしくなりそうだ。
国語審議会の後身である文化審議会国語分科会は、小学校卒業までに大半の常用漢字が読めるように指導法を見直すよう提言した報告書案をまとめた。
具体的には小学校の国語の時間を大幅に増やすとともに、教科書に多い「心ぱい」や「せい長」のようなの交ぜ書きをやめ、振り仮名を用いて「
昔は振り仮名で自然に漢字を憶えたが、第二次大戦後の混乱期に断行された国語改悪では、コスト削減をもくろむ新聞業界と、漢字を敵視する左翼によって、振り仮名は原則的に廃止されてしまった。
だが、W3Cは振り仮名を表示するためのルビタグを2001年3月に「Ruby Annotation」として正式に規格化している。95%以上の人が使っているといわれているInternetExplorerはルビタグに対応しているので、きちんと
近年、子供の脳はパターンの記憶に大人以上の能力をもっていて、幼稚園の頃なら数千の漢字をやすやすと憶えられることがわかってきている(石井勲氏の『楽しい漢字教室』と『漢字興国論』を参照)。
旧来の考え方に固執している人は、意味が理解できないのに、漢字の形だけ憶えさせても無意味と批判しているが、子供が言葉を自然習得する過程をみればわかるように、最初に真似ありきで、意味のわからない音声や字形を真似しているうちに、使いこなせるようになるものなのである。文法と辞書からはいった外国語学習がすぐに壁にぶつかってしまうことを考えれば、意味優先の言語観の誤りは明らかだ。
ようやくまともな答申が出そうなことはよろこびたいが、教育現場に反映されるまでにはまだ関門がある。学校教育にかかわる提言については、中教審の審議を経なければならないからだ。文部省&日教組合作のゆとり教育を認めてきた中教審である。はたしてどう出るか。
GoogleがDeskbarという新ツールを提供するというニュースが「ブラウザを超え、MSの領土へ踏み込むGoogle」(ZDNet)、「米グーグル vs 米マイクロソフト- デスクトップ上で一騎打ち」(CNET)という見出しで報道されている。
GoogleはすでにToolbarというツールを無償提供している。ページランクを知りたいので組みこんでみたが、ランクはすぐに飽きてしまったのものの、ページ内検索とポップアップ広告抑止機能は使いでがあり、手放せないツールとなっている。
ToolbarはWWWブラウザに組みこまれるが、DeskbarはWindowsそのものに組みこまれ、画面最下段のタスクバー(「スタート・ボタン」のあるところ)に検索語入力欄ができ、検索結果は画面右端にポップアップする小ウィンドウ表示される。
6日から試験公開がはじまったというが、日本Googleでも、アメリカGoogleでも見つからなかった。記事だけでは具体的な使い方がもう一つわからないが、WWWブラウザを立ちあげなくても、テキストエディターやWord、Excelを使いながらちょっとした検索できるわけで、これは大いにそそられる。
追記:ある方から、Deskbarはhttp://toolbar.google.es/deskbar/からダウンロードできると教えていただき、さっそくインストールしてみた。バージョンは0.5で、まだまだ改良の余地ありということか。
わたしの機械はToClipやsakuraエディタ、AltImなどを常駐させているので、タスクバーはかなり窮屈である。結果を表示するウィンドウはかなり大きく、読みにくくはないが、大きければ大きいで目障りではある。
一週間使いこんでから、感想を書くことにしよう。(Nov09 2003)
いよいよ総選挙だが、「救う会全国協議会」サイトの「衆議院選挙立候補者アンケート結果」で、個々の候補者の回答が読めるので、投票の前に、ぜひのぞいてみてほしい。
今日の選挙も投票率が伸び悩んでいるらしいが、TBSの「報道特集」で投票率99%という選挙を紹介していた。もちろん、日本ではなく、北朝鮮とフセイン時代のイラク、ミャンマーである。
敬愛する将軍様におかれましては第649号選挙区から立候補したが、朝鮮中央TVが放映した、なぜこの選挙区を選んだかという謎解きには笑った。
平壌のオバサンよろこび組が感激に声をうちふるわせながら講釈していたが、
6 + 4 + 9 = 19
9 x 4 + 6 = 42
6 x 4 x 9 = 216
という計算をすると、あら不思議、1942年2月16日という将軍様の御誕生日になるのだそうな。
選挙の朝には平壌の空に傘の形の虹がたったというニュースも紹介されていたが、傘の形の虹とはどんな虹なのだろう。
社会主義国の選挙は笑い話にしかならないが、前半で紹介された埼玉県志木市の穂坂邦夫市長の市政改革には目を見張った。
公用車を廃止して浮いた4千万円で、小学校1、2年生の25人学級を実現したという話からはじまったが(これだけでも立派)、市職員を減らすために、市民から市民パートナーと呼ばれる有償ボランティアをつのり、市役所の受付や公民館の運営をゆだねるという話につづいた。
有償ボランティアなどといっているが、時給700円を払うなら実態はパートタイムの市職員かアウトソーシングではないか、という疑問もあるだろう。ところが、呼び名だけの問題ではないらしい。市民パートナーはグループで市と対等の業務委託契約を結び、業務について提言ができるというのだ。時給700円なら、こんな事業、無駄だからやめてしまおうという提言だってしやすいだろう。
市民委員会というボランティア・ベースの委員会を設置し、政策の立案を現にまかせているのもすごい。中学校に1千万円するCAIのソフトをいれるかどうか、中学校側を呼んでヒアリングをおこなっている場面が放映されたが、中学校側の根拠は学習指導要領に導入が望ましいと書かれているということしかなく、市民委員会側の追求にたじたじとなっていた。最近のCAIがどうなっているのかは知らないが、あれはどういじっても子供だましであって、学習の役にも立たなければ、パソコンを習熟することにもつながらない。CAIなどに1千万円使うのは、税金をどぶに捨てるようなものだ。
これまでは、
と単線で動いていたのが、市民委員会に権限をあたえることによって、
と複線化するわけだ。
市民委員会は、二年目の今年、予算案まで作成したという。年末の市議会で市役所側の予算案とぶつけあわせるという。
志木市では戸籍や建設など、守秘義務や専門知識を要する部門以外は市民委員会と市民パートナーに業務を委譲していき、現在の619人の職員を20年で半減させ、最終的には50人にまで減らすことを計画している。
「地方自治解放特区」にはさらに驚くべきことが書かれている。有名無実化した教育委員会や農業委員会のみならず、市長まで廃止してしまうというのだ。
志木市は産業のなにもないベッドタウンなので、住民の高齢化により、数年後には収支が逆転し、以後、長期にわたって赤字が累積することが予想されている。今の時点で行政をスリム化しなければジリ貧に陥り、財政破綻は目に見えている。
志木市と同じような剣が峰に来ている市はたくさんあるが、どこも手をこまねいているだけだ。
志木市の穂坂市長は県議会議長まで勤めた人物だそうで、県と太いパイプがあるので、ここまで思い切った改革が断行できたという面があるらしい。こういう立派な政治家が日本にはまだいたのだ。
総選挙が終わった。保守新党が合流した自民党は241。ぎりぎり過半数という絶妙な数字である。
自民10減、民主40増、共産・保守半減、社民2/3減は事前の評判通りだが、公明3増は意外だった。自民が公明票を取りこむために、小選挙区は自民へ、比例は公明へと訴えたのが効いたらしく、公明の比例票は前回より97万票増えて873万票。
比例第一党は2210万票の民主。合併前よりも増えている。自民は400万票減らした2066万票で、公明に回ったと見られる97万票を足してもおよばない。公明が民主と提携したら、今回、完全に政権交代が起きていたわけだ。
共産党は3分の2の459万票にとどまった。志位委員長は小選挙区がどうのこうのといっていたが、比例で200万票以上失っているのだから、選挙制度だけが原因ではない。社民党は半減の303万票。いやはや、まだ300万人もいるのか……。
どの新聞も二大政党制のはじまりと書いているが、自民党は公明党の意見をとりいれて、憲法改正に本格的に踏みだそうとしており、民主党が股裂きになる可能性もある。社民党の残党が民主党に逃げこむなどということになったら、分裂は避けられないだろう。
拉致問題に早くからとりくんでいた西村眞悟氏と、松原仁氏が当選したのはよろこばしい。マスコミの予測では西村氏は民主党・自由党と合併問題、松原氏は石原ジュニアの立候補で厳しいといわれていたが、みごと勝ち残った。もっとも、拉致議連幹部にも落選者はいる。
「救う会全国協議会」の「衆議院選挙立候補者アンケート結果」が影響したのかどうかは微妙だが、北朝鮮に対して明確な姿勢を打ちだした候補が多く当選している点も重要である。アンケートに回答した候補者1159人でみると、北朝鮮への送金を制限するための外為法改正賛成は55%、万景峰号の入港を制限する新法制定賛成は51%だったが、当選した409人でみると、外為法改正賛成が81%、入港制限が75%と跳ねあがるのである。
拉致被害者家族会と「救う会」は北朝鮮に対する経済制裁関連法の制定を各党に強く求める声明を発表した。
10日付「殿下の御館」によると、比例区で復活した社民党の阿部知子議員は「私が当選したならば拉致問題解決のために北朝鮮に乗り込んで直談判する
」と言明したという。さて、楽しみ楽しみ。
「ほら貝」は今日で創刊8年目をむかえた。扉ページのカウンタは27万を越えており、このままのペースでいけば、来年5月には30万に達するだろう。
例年、創刊記念日には新しいコンテンツを追加してきた。今年は更新の滞っている映画ファイルを補完するために、「映画短評」をはじめる予定だった。映画を採点し、一行コメントをつける随時更新のコーナーになるはずだが、このところばたばたしていて、まだフォーマットを決めていない。今週中にははじめたいと思っている。
エディトリアルを毎日更新するようになって半年たつが、なかなかつらい。1時間以内にまとめたいのだが、2時間かかる日が多い。その結果、エディトリアル以外の更新が止まってしまっている。
新聞社サイトと日記サイトを毎日チェックし、比較するようになったことはプラスで、こんなことまで載っているのかと感心する反面、新聞社サイトの限界も見えてきた。ネットに掲載される記事はまだ一部にすぎないし、多くの新聞社サイトでは10日ほどで記事を消してしまい、リンク切れになる。本エディトリアルでMainichi INTERACTIVEをリンクすることが多いのは、毎日新聞の論調に賛成だからではなく、一番長く記事を掲載しつづけるからである。
韓国三大紙(朝鮮日報、中央日報、東亞日報)も見るようになったが、シリアスなニュースで見方が違うのは当然として、ヒマネタのセンスはもっと違う。中央日報はヒマネタが多く、ここでは「盧大統領のいたずら」というほほえましい記事(こんなことしている場合か!)をリンクしておくが、日本のスポーツ紙ばりの下ネタもよく載る。
この劇団、湯島聖堂で『天守物語』、旧細川侯爵邸で三島由紀夫の『熱帯樹』や『桜姫東文章』をかけたりと、いつもおもしろい場所で上演する。今回はなんと上野の東京国立博物館の東洋館地下ホール。演目が「マハーバーラタ」だからうってつけではある。
中味については「演劇ファイル」に書くが、今の季節の午後6時の上野公園は日がとっぷりと暮れ、人通りがすくなく、逢魔が時という感じで、わくわくしてくる。博物館の建物はライトアップされていて、なかなかの眺め。夜、中庭から見る機会はもうないだろうから、カメラをもっていけばよかった。
開演までかなり待たされたが、その間、一階の展示室を解放してくれたので、ガンダーラ仏と中国の石仏をじっくり見ることができた。ガンダーラ仏は愛敬がある。
早めに着いたので、展示室で一人になることがあったが、しんとしていて、これも気分が高まる。まさに『クローディアの秘密』だ。
芝居がはねたのが9時で、この頃になると、公園内は道路工事をやっていたり、マウンテンバイクの練習をしているグループがいたりと、かえって人出が増えている。上野から御徒町にかけての通りは不況とは思えないくらい賑わっていた。
電子書籍がまた騒がしくなってきている。松下のΣBookにつづいて、ソニーが来春の参入を発表したのだ(ZDNetの「2004年は“電子書籍元年”に? ソニーが本格参入」、CNETの「ソニー・講談社・新潮社などが合同で電子出版の新会社を設立」)。
専用の読書用端末を販売する点、大手出版社が参加している点はΣBookと同じだが、ΣBookが画像中心だったのに対し、こちらはXMLでデータ化するという。Σ陣営がマンガに強い出版社が多いのに対し、新潮、筑摩という文芸で実績のある出版社が顔をそろえていることからも、方向性の違いがうかがえる。
専用端末も四六判ハードカバー大、ディスプレイは文庫大のモノクロ電子ペーパーだそうで、これもマンガ志向ではなく、文芸志向の仕様である。
意外だったのは、コンテンツは売り切りではなくレンタルにするという点。「文芸」「ビジネス」「新書」などカテゴリーごとに会員を募り、月額料金を払うと、カテゴリーごとに5冊読めるそうだが、閲覧期間を2ヶ月に限定する代わりに、紙で出版する前の作品を投入していくという。
レンタルにしたのはSep06でふれた、デジタル・コンテンツの転売問題を避けるためだろうか。
しかし、これは話が逆ではないか。マンガ向きで、検索のできないΣBookこそレンタル向きであって、「文芸」「ビジネス」「新書」関係の本で2ヶ月しか読めないのは無茶である。堅目の本はくりかえし参照することが多いし、新刊よりも古い本の復活を望む読者が多いはずだ。参加している出版社は意味がわかっているのか?!
追記:ひょっとしたら、出版社側は、新刊書を宣伝するための有料立ち読み制度ぐらいに考えているのかもしれない。きちんと読みたいなら紙の本を買えという意味に解釈すれば、2ヶ月間限定という不可解な制限も意味が通る。
しかし、そんな甘い話が通るわけがない。このプロジェクトは失敗すると思う。(Nov15 2003)
Sonyの動きを牽制するつもりか、Mainichi INTERACTIVEには「ブレイク寸前の予感 電子ブックの端末登場へ」というΣBookの提灯記事が出ている(12日付なのに、Sonyの話が一言もなく、ΣBook礼讃に終始しているのだから、提灯記事というしかない)。
家電で鍔迫り合いをつづけてきた松下とSonyの参入で、2004年は電子出版元年と威勢がいいが、はっきりいって駄目だと思う。出版社が表に立っても、メーカー主導の企画であることは見え見えではないか。
ニュース・ステーションの「環境立国」シリーズで、ハザカプラントという生ごみを堆肥化するシステムをとりあげていた。
ハザカプラントは宮城県村田町の県南衛生工業の社長、葉坂勝氏が1984年に開発した「高速発酵堆肥化装置」の通称である。葉坂氏には『バクテリアを呼ぶ男―究極の生ゴミ革命』という著書があるが、検索すると紹介したページがたくさん見つかった。「長崎浩のミクロの目」、七十七ビジネス振興財団の「平成13年度七十七ニュービジネス助成金受賞企業」、宮城県中小企業同友会の「12月例会レポート」あたりがよくまとまっている。藤沢市の市議会議員氏の2001年10月の視察記も興味深い。その世界では有名なシステムのようである。
家庭用生ごみ処理機を大型化したものかと思ったが、すこし違った。家庭用生ごみ処理機は特別な種菌をいれたり、加熱したり、攪拌したりで、かなり電気を食うが、ハザカプラントは特別な菌は使わず、加熱もおこなわない。ビニールハウスの中に作った深さ2m、幅7m、長さ100mのレーンと呼ばれるコンクリート槽の一方の端から生ごみ・汚泥類・屎尿・家畜糞尿・血液・魚介類等の有機性排出物を投入し、もう一方の端からすっかり土に変わった堆肥を30t分取りだしたら、キャタピラのような機械で端から端まで攪拌するだけである。生ごみは1日4m移動し、25日で発酵を終えるが、取りだした堆肥の一部をあらたに投入する生ごみに混ぜるので、特別な菌をいれる必要はない。レーンの内部は発酵熱で90度近くまで上昇するので、加熱も必要がない。きわめて低コストのシステムらしい。
葉坂氏はこのシステムを地元の農家が昔からつづけている堆肥づくりの手法をヒントに確立したが、毎日攪拌することで、発酵期間をわずか25日に短縮できたそうだ。処理能力も高く、300レーンあれば東京都全体の生ごみが処理できるという。
できた堆肥もすぐれていて、発酵学者でグルメの小泉武夫氏はハザカの堆肥で作った野菜を絶賛していた。実際、トマトは普通のものよりも倍の糖度があった。
久米宏はあまりにも安あがりなシステムなので、利権の種にならず、逆に広まらないとコメントしていたが、ありがちな話である。
8月20日、三重県多度町の三重ごみ固形燃料(RDF)発電所で、貯蔵タンクが爆発・炎上し、二人の消防士が殉職するという事件が起きた。
RDFはゴミを乾燥・圧縮したペレット状の燃料だが、Sankei Webの「県や消防本部など家宅捜索 三重のごみ発電所火災」によると、RFDを製造する際、乾燥と圧縮が不十分だったために貯蔵中に発酵発熱し、自然発火したとみられている。「RDFは夢の発電か?」によると、環境省側は「RDFそのものの基準は水分10%以下だけだが、適正に製造していれば長期間の貯留が容易。危険という発信はしていない
」としているが、三重県は「数値としての規格がなかったため、返却できなかった
」といっているという。これでは偶発的な事故というより、構造的な問題である。
「ちょっと待ってよ! ゴミ発電」によると、同様の「事故」は各地で頻発しており、RDF発電そのものに疑問が投げかけられている。新エネルギー財団の礼讃ページの主張はかなり怪しい。
RDFは製造施設、貯蔵施設、発電施設と巨額の設備投資が必要で、新たな利権と化しているらしい。もっと簡単・安全・低コストに生ごみを処理する方法があるのに、土建屋政治はどこまで日本を食い物にするつもりなのか。
東京新聞に「男性が持つY染色体 日本人のルーツ解明のカギに」という記事が載っている。
人類のルーツ探しがこのところ話題になっているが、これまで使われてきたのはミトコンドリアDNAだった。ミトコンドリアは核の中ではなく、細胞質に散財するので、子孫に伝わるのはほとんどが卵子起源で、母系しかたどることができない。
しかし、サイクスの『イブの七人の娘たち』によると、男性だけがもつY染色体上にもルーツ探しに使える塩基配列が見つかっており、ヨーロッパ人の場合、10の父系クラスターにわかれることが確認されたという。
日本人はどうなのかと気になっていたのだが、この記事によると4のクラスターにわかれるそうだ。日本人には4人の父祖がいることになる
4人の父祖はYAPという塩基配列をもつかどうかで二分される。YAPをもたない3人の父祖は弥生人系、もつ1人父祖が縄文系のようである。YAPをもつ縄文系はタイプ2と呼ばれているが、世界的に見ても興味深い特徴をそなえているという。
YAP+型は“縄文系”の男性とみられる。宝来聡・総合研究大学院大学教授(人類学)の研究では、アイヌ民族の88%にYAP+がみられる。古い形質を残した遺伝子型のようだ。このタイプはアジアでは日本列島だけにあり、朝鮮や中国、シベリアにはみられない。世界を見渡しても日本人のほかには黒人にしかみられない変わった遺伝子型だ。
中堀教授は、YAP+の集団を「タイプ2」とした。タイプ2は、都市部では北から南まで均等に分布し、金沢、福岡、大阪、札幌のいずれで調べても、人口の三割程度を占める。しかし本州や四国の山間部では五割を占めていた。弥生人に追われた縄文人という通説にほぼ合致する結果だ。精子濃度が薄いという特性があるという。
YAP+は日本列島に南回りルートで最初にはいってきた古モンゴロイド・グループに相当するのだろう。YAP+をスサノオ型と呼んでみたくなる。
YAPをもたない3つのグループのうち、タイプ1は縄文系との混在タイプだそうで、純然たる弥生型はタイプ3とタイプ4の二つ。
そのうちのタイプ3は際立った特徴をもっていた。タイプ3の学生を調べたところ、「摂取カロリーが低く、体格が小さい省エネタイプ。一方で兄弟姉妹が多く、性格的には男性的など、生殖に強いことをにおわす性質がある
」そうである。
単純に考えれば、精液濃度の薄いタイプ2(縄文型)が滅びて、生殖能力の強いタイプ3ばかりになるはずだが、実際はそうなっていない。
徳島医大の中堀豊氏は「学生の親世代がおかれた時代環境のせいかもしれない。あるいはタイプ3は生存に不利な点があって、それを生殖力で補っているのかもしれない
」とコメントしているという。タイプ3は血の気の多い性格なので、戦争があると真っ先に死ぬタイプなのかもしれない。
細菌のDNA研究でも新発見があった。新種どころか、新しい門を設けなければならないほど、DNAが異なったジェマティモナス・オーランティアカという細菌が発見されたのだ。
門が異なるということは、人間(脊椎動物門)と昆虫(節足動物門)くらい違うということだ。ジェマティモナス・オーランティアカは生命の黎明期に分岐したと見られるが、なんと下水の中に棲息していたという。なにが起こるかわからない。
NHKスペシャル「文明の道」の第7集「エルサレム 和平・若き皇帝の決断」を見た。
シチリア王から神聖ローマ帝国皇帝に即位したフリードリッヒ二世(フェデリコ二世)は、第5回十字軍を率いながら、外交交渉によって、一滴の血も流さずにエルサレムの統治権を獲得したが、その背景にはビザンチン、イスラム、カトリックという三大文化を共存させたシチリア王国の繁栄があったと指摘する(シチリア王国についてはIKE氏の「マニアック・パレルモ」がお勧め)。
ローマ教皇から破門されながらも、イスラムとの共存を選んだフリードリッヒ二世という特異な皇帝とパレルモの多文化共存については、高山博氏の『中世シチリア王国』にちらと出てきたが、条約締結にこぎつけたのは、イスラム側のアイユーブ朝第五代スルタン、アル=カーミルの働きかけがあったことを知った。フリードリッヒ二世もすごいが、アル=カーミルも大変な人物である。
フリードリッヒ二世とアル=カーミルの築いた平和は10年で破れ、シチリア王国も、フリードリッヒの没後、ローマ教皇がさし向けた十字軍によっては蹂躙される。シチリアの繁栄は終り、以後、現代にいたるまでイタリアの最貧地域となっている。
貧困は狂信を生む。シチリアはカトリックの強固な地盤だが、宗教にとっては信者を貧乏にしておいた方が好都合ということか。
検索したところ、フリードリッヒ二世は医薬分業の勅令を出していたことがわかった。ローマ教皇の破門がまだ解けていないというのも驚きである。
日経新聞のSunday Nikkeiが街頭で配られるポケット・ディッシュをとりあげていた。ティッシュそのものはアメリカ生まれだが、ポケット・ティッシュは1960年代に日本で生まれた。最初は手作業で折りたたんでいたが、1968年に機械化されると、銀行の窓口の景品になり、1980年代はじめに街頭配布がはじまった。単価は5〜10円で、登場以来、ほとんど変わらず、近年は年間20億個以上も生産されているという。
街頭配布は日本だけの習慣だそうである。15年ほど前にニューヨークで試験的に配布したところ、誰も受けとってくれなかったという。「知らない人から自分の体に触れるものをもらうのは怖い
」というわけだ。アメリカでは街頭で試供品を配ることも皆無とのこと。
無料だと使い方がぞんざいになるのは確かで、ポイ捨てが各地で問題になっている。富士山が世界遺産に選ばれない原因にもなっているというのは、なるほどと思う。
食うや食わずで神様やら将軍様を拝んでいるより、宗教をバカにしながら、ティッシュのポイ捨てのできる国の方が住みやすいのはいうまでもない。
昨年5月にプロバイダ責任制限法が施行されてから1年半がたとうとしているが、ZDNetに現状をまとめた「「プロバイダ責任制限法」に残る、これだけの課題」という好記事が出ている。
わかりやすく書かれているが、それでもわからないという方のために、わたしなりに思い切った単純化をすると、この法律はプロバイダや掲示板の主宰者は通信業者なのか、出版業者なのかという問題にけりをつけるために作られた、といえると思う。
もし通信業者だとしたら、WWWサーバーやメールサーバー、掲示板を利用した名誉毀損行為やプライバシー侵害行為、著作権侵害行為があったとしても、プロバイダにはまったく責任がない。逆に、被害者から抗議を受けて、WWWサイトやメッセージを削除したり、発信者の個人情報(住所氏名、IPアドレス、アクセスログ)を開示したら、守秘義務違反で罰せられることになる。
ネットによるコミュニケーションは確かに電気通信にはちがいないが、WWWサイトや掲示板は不特定多数の読者が読むものであり、特定の個人との間でやりとりされる信書とは性格が異なってくる。影響する範囲も段違いに広い。そこで、むしろ出版業者と同様にあつかうべきではないかという考え方が浮上してくる。
プロバイダや掲示板主宰者が出版業者にあたるとしたら、違反行為に連帯責任が生じ、加害者の個人情報の開示にも応じなければならなくなる。Nifty裁判ではこの線で判決が出て、Niftyとシスオペ(フォーラム管理者)にまで賠償責任がおよんだ。
プロバイダ責任制限法は、WWWサイトや掲示板のような「不特定の者によって受信される電気通信
」を「特定電気通信
」と定義し、特定電気通信提供者(プロバイダ)が、免責されるにはどのように対応すればいいかを定めている(不特定読者を相手にした通信を「特定電気通信」と呼ぶのはまぎらわしい。「不特定電気通信」とするか、「特定」という語を避けて「特殊電気通信」と呼ぶべきだろう)。
具体的な対処法は「裁判に負けない「プロバイダ責任制限法」の読み方」に解説してあるが、まだ雲をつかむような話で、結局は判例待ちということになっていた。
さて、ここでようやく最初の記事にもどるが、施行後1年半で、以下のような問題点が出てきたとしている。
詳しくは同記事を読んでほしいが、最後の「「被害者」が本当に被害者か?」という問題は言論の自由に直結するので重要である。
プロバイダや掲示板主宰者が免責を受けるには、「被害者」の削除要求や発信者の個人情報開示に応じなければならないが、事情に通じないのに、「被害者」の要求が正当なものかどうかの判断を迫られる場合も出てくるだろう。著作権は権利関係はこみいっている場合が多いし、名誉毀損と内部告発の線引きも微妙である。裁判になると、発信者は身元をあかさなければならなくなり、内部告発が一層困難になるという問題もある。
記事は岡村久道弁護士の「発信者が匿名で訴訟参加できるような枠組みを考えないといけないのではないか
」というコメントで締めくくっているが、重大な問題提起だと思う。
英国で、ネットワーク犯罪で起訴された被告が、犯行は何者かが仕掛けたトロイの木馬のしわざだと主張し、無罪になったという記事がZDNetに載っている(「ハッキングは「私ではなくマシンの仕業」」と「犯人は「私ではなくトロイの木馬」?」)。
無罪判決は3件ある。2件は児童ポルノがらみで、パソコンの中にトロイの木馬が発見されたが、残りの1件は痕跡すらなかったという。
痕跡も発見されなかったケースは、2001年9月に起きたヒューストン港の独立系下請け業者、Houston PilotsのサーバーにくわえられたDoS攻撃の嫌疑で、起訴された19才のキャフリー氏はチンピラ・クラッカー(script kiddy)の集まるIRCの常連で、女性関係のトラブルで仲間にトロイの木馬を仕掛けられたと主張していたもの。
手慣れたクラッカーなら痕跡を消すことも可能なわけで、キャフリー氏の言い分には一理あるが、「この説明は(弁護士が)クライアントを罪から免れさせるための、巧妙な弁護策にもなっている
」と警鐘をならす専門家もいるという。
トロイの木馬の感染経路はメールだけでなく、ポップアップ広告、バナー広告、ポートからの侵入と多様化しており、他人事ではない。日本ではこうした主張は認められるだろうか?
セキュリティ関係では「ウイルスやスパイウェアの次に来る「電磁波の脅威」」という記事も見逃せない。
無線LANやモニター・ケーブル、プリンター・ケーブルからの漏れ電磁波による情報漏洩はかねてから指摘されているが、なんと100m離れた地点からも傍受が可能だそうである。
逆に外部から強い電磁波を浴びせることで、情報機器をダウンさせる電磁波攻撃の危険性も指摘されている。
電磁波攻撃はイラク戦争で実際におこなわれたという報道があった(HotWiredとMainichi INTERACTIVE)。電磁波爆弾や大がかりな装置が必要というイメージがあるが、実はそうではないらしい。ZDNetによると、「システムが30分に1回リブートしてしまうだけで、事実上の破壊に等しい。この程度の電磁波なら、簡単に作れる
」というのだ。
HTPC関係のサイトで知ったのだが、日本の建物の屋内配線は外部からのノイズをひろいやすいという。EUにはノイズ規制があって、屋内配線はツイストし、アンテナにならないようにしてあるが、日本は電気がつながるかどうかしか頭になく、ノイズという視点がまったく欠落しており、ノイズに対してまったく無防備だそうである(The Keith Armstrong Portfolio参照)。
電源ノイズはオーディオやDVDの再生で大きなハンディキャップになっているという。素人考えだが、おそらく電磁波攻撃にも弱いのではないだろうか。
ジャストシステムがATOK.comで、先月実施した「日本語をとりまく環境についての調査」というオンライン・アンケートの結果を公開している。
3000を越える回答があったというが、日常書く文字は手書きか、パソコンかという設問では2/3の人がパソコンと答えている。年代別では10代が半々なのに対し、20代以上は60数%にはねあがる。年齢を重ねるにつれ徐々に高くなっていき、70代以上では8割がパソコン派である。70代以上の回答者は36人、1.4%だそうだが、もちろん、日本の老人の8割がパソコンを使えるわけではない。オンライン・アンケートであることを割り引いて考える必要がある。
パソコン入力で変わったことはという設問では、漢字を使うことが増えたという人が4割を超えている。これは予想通りだが、意外なのは漢字や意味を調べることが増えたという人が同じくらいいること。メールや重要な文書に言葉の間違いを見つけたことがあるかという設問で、2/3があると答えていること、自由回答で「社会全体で言葉が衰えている」と書いている人が405人で一番多いことと考えあわせると、日本語の間違いに敏感になっていることがうかがえる。
どういう辞典を使っているかという設問では男女差が顕著に出ている。紙の国語辞典が半数を占めているのは当然として、CD-ROM辞典が男性11.4%に対し、女性5.4%と半分である。インターネットで調べるが男性24.1%、女性28.5%という結果からすると、電子の辞書に抵抗があるのではなく、単にケチなだけかもしれない。
笑ったのは「パソコンでお使いの日本語入力ソフトは何ですか?」という設問である。
ATOK MS-IME ことえり その他 1年未満 36.5% 46.2% 3.8% 13.5% 1〜3年未満 35.7% 53.8% 5.5% 11.5% 3〜5年未満 56.1% 52.4% 8.2% 4.8% 5〜10年未満 65.0% 48.9% 12.0% 5.0% 10年以上 76.0% 39.7% 13.9% 5.3%
ATOK.comでとったオンライン・アンケートである以上、ATOK利用者が多いのはあたり前だが、WindowsとMacintoshをいっしょくたにして、ATOKがすべてのプラットホームで最強であるかのように見せかけていることに注意しよう。Macintoshユーザーだけで集計すれば、ことえりの方がATOKより多いのではないか。ことえりの利用者がパソコン歴1年未満で3.8%なのに対し、5年以上で10%を越えているのは、Macintoshユーザーが減ってきていることを示すものだろう。
また、この設問は複数回答可であって、パソコン歴3年以上のユーザーの場合、各IMEを合計すると100%を越えている。
「パソコンを使いこなしていくうちに、既存の日本語環境では満足できず、結果として高い意識をもって日本語を操るようになるのではないでしょうか
」と結論しているが、要するに、これを書きたかったわけだ。
ウクライナのキエフ外語大で日本文学を学ぶ学生からメールをもらった。やけに丁寧な言葉遣いで拙サイトの英語ページを持ちあげていたが、要は現代日本文学の翻訳をしたいので、現代作家の本を送ってもらえないかという依頼だった。
村上春樹のロシア語の翻訳が売れているそうで、日本では有名だが、ロシア語圏では知られていない女流作家がいいなどと書いてあった。
ソ連崩壊後は日本語の本が極度に入手困難になっていて、キエフにある日本文化センターの図書館には教科書の副読本的な古い作家の本しかおいていないという。そんなものだろう。
どうせ英語の日本文学サイトを開いている人に片端からメールしているのだろうと思ったが、現代作家の作品を読む助けになるサイトのURLを二つ記して返事を出した。
一つは日本ペンクラブの電子文藝館。井上ひさし会長以下、日本ペンクラブの錚々たる会員が自作を無償で公開しているもので、特に「歴代会長室」のコーナーは壮観。遠藤周作の『白い人』のように、ご遺族に承諾いただいて、単行本一冊をまるまる公開していたりする。
日本語フォントがないと表示できないので、フリーフォント公開サイトを英語で紹介している大阪地域大学間ネットワークのページをを併記したが、フォント公開サイトの方には英語の説明がないので、いれられるかどうか。
ちょっと探してみたが、無償公開の日本語フォントはたくさんあっても、英語の説明のあるサイトは見あたらなかった。海外の日本語学習者は200万人もいるそうだから、英語の説明の需要はあると思う。ご存知の方はご一報を。
もう一つは国立国語研究所の日本語書籍検索サイト「JiBooks」。こちらのサイトは日本書籍出版協会の目録と、早稲田大学図書館の蔵書を検索できるというものだが、国立国語研究所が開発した「海外文字配信システム」を使って、gif画像を組みあわせて日本語を表示するので、日本語フォントは必要ない。
HotWiredで「東海岸縦断ギーク捜しの旅」という連載が進行中である。「ギーク」とは変人・オタクという意味で、「タモリ倶楽部」のノリに近いが、もっとアカデミックというか地味で、これまでにエニアック発明者の孫とか、大渦潮で遭難しかけた生存者の会をとりあげている。
今回の「世界唯一の「2砲身の大砲」」では、南北戦争時に作られた奇妙奇天烈な大砲が紹介されている。
写真を見るとわかるが、双眼鏡のように並べた二門の大砲に、鎖でつないだ砲弾を先ごめして同時に発射するというもの。
当時の戦闘は、オモチャの兵隊のような軍服を着た歩兵が横一列に並び、軍楽隊のマーチに合わせて前進していくというものだったから、鎖でつないだ砲弾が飛んできたら、「大鎌で麦を刈り取るように敵をなぎ倒す
」ことも不可能ではない。
しかし、そのためには両方の砲弾を何千分の一秒という誤差で、同時に発射しなければならない。130年前の技術でそんなことができるはずはなかった。はたして実験はさんざんな結果に終わった。記事から引く。
大砲の脇の説明書きによると、「テストは、ニュートンのブリッジロードの草原で、垂直に立てた棒を標的に行なわれた。2つの砲弾が詰め込まれ、砲弾を結んだ鎖が2つの砲口から垂れ下がっていた。しかし発射時に装薬がばらばらに爆発したため、鎖がぷつんと切れ、それぞれの砲弾が不規則で予想もしなかった弾道を描いた。
当時の状況を記した非公式の資料は、現場がもっと悲惨な状態になったことを伝えている。発射された2つの砲弾は、鎖につながったまま狂ったように回転していたという。
見物人たちが悲鳴を上げて逃げまどったり地面に伏せたりするなか、回転する2つの砲弾は、そばの林を突き抜けてトウモロコシ畑をめちゃくちゃにしたあげく、おしまいには、つないである鎖が切れて飛んでいった。1つは牛に命中してこれを殺してしまい、もう1つは近所の家の煙突を壊した。
これでは危なくて実戦に使えたものではないが、発明者のグルランド氏はすこしもめげることなく、南軍の指揮官や政治家たちに採用を働きかけて回った。もちろん、まったく相手にされず、結局、「2砲身の大砲」はジョージア州アセンズの市庁舎前に号砲用として設置され、今も雄姿が拝めるという。
同じくHotWiredの「使い捨てDVDの売れ行きは低調」によると、May19でふれた使い捨てDVD、EZ-Dは8月に鳴り物いりで発売したものの、一ヶ月に一店あたり15〜20枚しか売れず、さんざんな売行だという。
原因は値段らしい。安い店でも一枚7ドル(800円)だそうだから、普通にレンタルした方がはるかに安いし、正規のDVDもたいして変わらない値段で買える。アイデアはおもしろいのだが、どうも「2砲身の大砲」と同じ末路をたどりそうである。
CNETの記事で、電子商取引推進協議会(ECOM)と三菱総合研究所が共同でおこなった「電子自治体の構築状況とワンストップサービスに関する実態調査」を知った。
自治体がコンピュータのあつかえる人材の不足と予算の不足から、住民のプライバシーにかかわる業務まで外部に委託している問題についてはNov05でふれたが、この調査はどちらからといえば外部委託を推進する立場から、自治体の電子化とアウトソーシングの現状を概観している。昨年につづく第二回の調査で、全国3250自治体のうち、2割にあたる700自治体から有効回答があったという。
この調査のポイントは複数の自治体が共同で外部委託する共同アウトソーシングと官民連携ポータルにある。自治体相手にビジネスを仕掛けたいという関心が調査の基本にあるようだ。
回答した自治体の実に3/4が市町村合併を検討していて、この調査では人口別だけでなく、合併の予定があるかどうかでも集計している。人口別では10〜30万人の自治体が一番共同アウトソーシングが進んでいるが、合併別では合併の予定のない自治体の方が進んでいる傾向がみられる。合併する自治体は合併後まで手をつけられないということだろう。
電子化の進み具合は人口10万を境にはっきりわかれる。10万以下の自治体でも、ホームページ開設や住基関係・税務関係ではそれほど差がないが、それ以外はお寒い状態である。
そこで共同アウトソーシングとなるのだが、なかなかそうはいかない事情がある。
共同アウトソーシングの効用としては導入費用・運用費用の削減をあげている自治体が多く、「職員負担の軽減」と「人材不足」、外部業者の「専門知識の活用」(三つとも同じことだ)がつづく。問題点としては「自庁向けカスタマイズが困難」が一番多く、「既存システムベンダーとの調整が困難」が次に来る(二つとも同じことだ)。「自庁向けカスタマイズが困難」と答えている自治体は人口10万以上のところが多い(人口1万人以下はもっと比率が高い)。コンピュータのわかる職員がいないので、どうしたらいいかわからないというところだろう。
ホームページのアクセス状況ではおもしろい結果が出ている。全体では人口千人あたり月700件のアクセスがあるが、人口1万人を境に大きな違いがあるのだ。1万人以下の自治体では月1400件/千人なのに対し、1万人以上の自治体では月300人/千人。ミニ自治体のアクセス数が多いのは観光情報のおかげか。
官民連携ポータルで一番実現の可能性が高いとされているのは観光ポータルで、引っ越しポータルや公共料金支払いポータルは関心は高いが、現在の法制度では実現が難しいと答えている自治体が多い。結論は法制度の整備が必要というところに落ち着くわけだ。
久々に北朝鮮関係の話題。
朝鮮日報日本版の「北放送「金正日総書記の呼称は1200余」」によると、将軍様が後継者に指名された1974年以来30年間に、外国の著名人などがたてまつった「魅惑的な尊称
」は1200を越えると報じたという。たとえばジンバブエのムガベ大統領は「思想理論の英才」「領導芸術の大家」と賞賛したそうで、以下、ほんの一部をあげると、
「21世紀の太陽」、「わが惑星の守護神」、「万民の天」、「偉大なる人間元老」、「人徳で天下を動かす絶世の偉人」、「先軍思想の創始者および具現者」、「非凡な軍政治活動家」、「首領永生偉業の新しい歴史を切り開いた偉大なる領導者」、「熱い愛と信頼の永遠なる胸」、「神妙な戦略戦術家」、「完全無欠な軍事家」、「百勝の作戦家」、「将軍型政治家」、「将軍中の将軍」、「無敵必勝の象徴」、「天下第一の領軍芸術家」、「不敗の司令官」、「哲学の巨匠」、「文学芸術と建築の大家」、「人類音楽の天才」、「天から降りた英雄」、「世界的な大文豪」etc
将軍様にあらせられては、インターネットにも精通されているそうで、「専門家も驚くほどのコンピューター通」という尊称もあるそうな。
ご苦労様というしかないが、褒め言葉を適当に並べればいいものでもないという。「偉大なる首領様」は1980年代には金日成だけに冠され、金正日は「偉大なる指導者」と区別されたが、1990年代にはいると金正日も「偉大なる首領様」と呼ぶことになった。
こんな区別、部外者にはどうでもいいことだが、担当者は間違えると収容所送りになりかねないから、命懸けだろう。
東亞日報日本版の「米国、在韓米軍の「引継鉄線」役放棄を示唆」によると、韓国では在韓米軍の龍山基地移転問題が紛糾している。敷地交渉が決裂したら、前方配備されている在韓米軍は漢江の南に下がることになるという。
「引継鉄線」とは地雷の引金になるワイヤーのこと。北朝鮮軍が南侵した場合、前方配備された米軍と最初に衝突し、アメリカと全面対決せざるをえなくなる。現在は在韓米軍が弾除けになっているわけだ。北朝鮮軍にはもう南侵する力はないと思うが、在韓米軍が漢江以南に下がるとなると、ソウル市民だけでなく、韓国経済も心理的ダメージは避けられない。
20日、アメリカ上院東アジア太平洋小委員長の共和党サム・ブラウンバック議員は、民主党のエバン・ベイ議員とともに超党派で「North Korea Freedom Act of 2003」という法案を提出した(中央日報日本版とMainichi INTERACTIVE)。
この法案は、アメリカ政府は脱北者に避難場所と支援を提供し、入国を許可するだけでなく、北朝鮮の大量破壊兵器に関する情報を提供した脱北者には永住権をすみやかにあたえるとし、Voice of Americaの対北朝鮮放送を拡大し、北朝鮮住民にラジオを送るために、年間1100万ドル(12億円)を支援するという内容まで盛りこまれている。
ブラウンバック議員は「法案は、北朝鮮の大量殺傷兵器の開発を中断させ、韓半島で民主政府による統一を支援し、北朝鮮の人権を改善するためのものだ
」と語っているというが、明らかに金正日政権崩壊を狙っている。
うれしいことに、同法案には
北朝鮮により拉致された日本人と韓国人について完全で包括的な情報公開のために、米政府があらゆる努力を尽くしたことを示せない限り、米政府のいかなる機関も北朝鮮へ人道支援を除く支援を行うことはできない。
と明記されている。家族会の訪米は成果があったのだ。
一方、特定失踪者問題調査会は新たな「拉致濃厚」な失踪者のリストを公開した(Sankei Web)。言うまでもないことだが、特定失踪者問題調査会に届けられるのは家族のいる人だけで、身寄りのない拉致被害者は含まれていない。三鷹事件のように、身寄りのない日本人を狙う事例がかなりあったとようだから、拉致問題は底なしである。
「人体の不思議展」を見てきた。
数年前、プラスティネーション技法による「人体の世界」展を見たが、あれはドイツ製で、かすかに溶剤の臭いがした。今回はプラストミックという改良した技法で、まったく無臭。中国南京の製作。手で触れられると宣伝していたが、触ってよいのは出口近くにあった一体と、バネでつるした脳の標本だけだった。
プラスティネーション標本は見ていてハイな気分になったが、今回のプラストミック標本は妙に生活感があって、だんだん鬱になった。
標本化の技法にたいした差があるわけではない。それより演出の違いが大きいと思う。
プラスティネーション標本は超現実的なポーズをとっていたり、展開標本では合体ロボのような派手なばらし方をしていたが、プラストミック標本は地味というか学術的で、いかにも「標本」という印象。
顔の問題もある。プラスティネーション標本は顔の皮膚がことごとく剥がされていたが、プラストミック標本は顔の皮膚がついているものが多く、生前を知っている人なら見わけがつくだろう。
プラスティネーション標本はショーアップしすぎじゃないかと思っていたが、あれくらい派手に演出しないと、神経がまいってしまうのだ。
当分、肉が食べられそうにない。
ZDNetの「Microsoftは検索をどこまで進化させるのか」という記事がおもしろい。
MSが研究しているさまざまな検索関連の話題を紹介しているのだが、日本の暦本純一 氏のような、現在のインターフェースをひっくり返すような大胆な発想ではなく、5年で売りだせそうな技術ばかりというところがあの会社らしい。
最初の多フォーマット・データ平行検索はあまり興味がない。「知子の情報」のような他社のファイルまで検索してくれるのかは気になるが。
興味を引かれたのは二番目に出てくる検索のパーソナライズだ。現在のサーチエンジンはGoogleでも、ローカル・マシン内のNamazuでも、同じ検索語(の組みあわせ)を入力すれば、同じ結果が吐きだされる。それを利用者の関心に合わせてパーソナライズしようというのだ。
鍵となるのはローカル・マシン内部に蓄積されたWebキャッシュと個人データである。記事から引く。
Microsoftの実験は、検索対象となるデータが個人のHDD内にあるという点で商用検索エンジンとは異なっている。検索範囲はやや狭いが、細部に目が行き届く。同社によれば、複数の調査で「Webページのうち、最大81%は繰り返しアクセスされている」との結果が出たという。ユーザーが見たい(Webページへの)リンクは、そのユーザーのHDDの中にある可能性が高いということだ。
それに、検索範囲が拡大されないという理由もない。範囲を拡大すれば、Longhornやその他の検索機能を強化したアプリケーションで、商用検索エンジンに対抗することができるだろう。デュメイス氏は、検索の際に、検索に使われたPCの地理的な位置も考慮に入れる可能性もあるとしている。
これは2〜3年で手の届きそうな技術である。MSはImplicit QueryとStuff I've Seenという二つのプロジェクトを並行して進めているというが、後者のStuff I've Seenはかなりいい線をいっているらしい。Googleもうかうかしていられないだろう(DeskTopBarはもしかしたら、ローカル・マシンのデータを利用しようという布石か?)。
三番目に出てくるMemory Landmarksは日本でも似たような研究が進んでいたと思う。名前は失念したが、時系列をさかのぼって過去のデスクトップを復元するというもの。『「超」整理法』で有効性が証明されたように、時系列はいい検索キーになる。
以前、素人が新作映画に出資する映画の証券化が話題になったことがある。今度は新人アイドルを証券化する試みがが人気を集め、出資希望者の電話が殺到しているという。今日のYOMIURI ON-LINEにも載っているが、こういうニュースはZAKZAKの方が詳しい。
契約期間2年で1口5万円の出資者を100人募り、その資金でDVDや写真集を製作して、売り上げに応じて年1回配当金を支払うという。
DVDの場合、配当に回されるのは売上の10%だそうだから、1万数千本売れないと出資金はとりもどせない。主催者は「もし売れなくても元本の4割ぐらいは保証できるようにしたい
」と語っているそうだが、それでも出資希望者が殺到するのは「ファンクラブに入るつもりで投資すればいい」と考えているためというアイドルグッズ専門店のコメントがついている。しかし、それだけでなく、育て系ゲームの影響もあるだろう。
同じZAKZAKに、後継者問題にからんで、北朝鮮でクーデターの可能性があるというきな臭い記事が載っている。失脚したとされている将軍様の長男、金正男氏が高英姫夫人の重篤な病状を好機と見て、巻き返しをはかっているというのだ。本命と見られていた三男の金正雲氏がまだ10代で、この機会を逃したら金正男氏の後継の目はなくなるというのも確かだろう。
産経本紙に載っていない、夕刊フジの特ダネだという。
HotWiredに「700誌の記事を無料で全文検索可能に」という記事が出ている。
検索広告で有名なLooksmart社のFindArticlesという無料雑誌記事検索サービスが大幅に拡充され、700誌、350万件の記事の全文を検索できるようになったというのだ。Jul28で、アメリカの大手書店チェーン、Bordersが月額5ドルで140誌余の契約雑誌の記事を読めるサービスをたちあげたことを紹介したが、Looksmart社の方は無料だし、蓄積しているデータ量も膨大で、インパクトははるかに大きいだろう。
早速試してみたが、"Last Samurai"で検索したところ、394件がひっかかり、読みたい記事の表題をクリックすると、記事本文がFindArticles仕様のHTMLで吐きだされてきた。HTMLだから、保存、Copy&Pastともに可能である。
記事に使われている写真や図表は、出版社サイトにおいてある画像ファイルのURLが表示されるだけなので、自分でURLをコピーし、WWWブラウザのアドレス欄に貼りつけなくてはならないが、それだけのことで、ちゃんと見ることができた。
雑誌記事はレイアウトを工夫しているものが多く、レイアウトこみで一つの作品と考える立場もある。その立場からすれば、こういう不完全な形での提供では不満だという読者もいるだろうし、提供側には作品の同一性保持権の侵害ととらえる人だっているかもしれない。しかし、これで十分という読者も多いはずである。
"Kill Bill"や"Last Samurai"のアメリカでの評判はネットで調べることができるが、紙媒体ではどうなんだろうという疑問がつきまとう。自宅にいながらにして、アメリカの紙媒体の評価を一覧できるのだから、便利になったものである。
HotWiredの記事は、Looksmart社がこういう思い切ったサービスをはじめなければならなかった事情まで書いているが、ずっとつづいてほしいと思う。
ADSという会社が、VeriPayという腕に埋めこんでクレジットカード代わりに使うRFIDを発売したZDNetとCNET)。先着10万人に50ドルの特別価格で埋めこむキャンペーンをはじめているという。
記事にあるように、スキャニングされたり、強盗に腕の肉をえぐりとられたりする危険がある。万一、スキャニングされたら、手術して取りださなければならないだろう。こんな馬鹿げた代物が広まるはずはない。
10月29日に西安で起きた反日暴動事件の詳報がasahi.comに出た(「「謝れ」連呼、学生暴徒化 検証――中国・西安寸劇事件」)。大変ゆきとどいた記事であり、ようやく事情がのみこめてきた。
この事件は日本人留学生が中国人を馬鹿にした猥褻な寸劇を演芸会で披露したのが発端とされていたが、当初は中国メディアとインターネットの中国語掲示板しかソースがなく、寸劇を演じて退学処分になった留学生をふくむ日本人が西安から帰国した後も、詳しい続報がさっぱり出てこなかった。わたしが目にした範囲では、留学して間もない学生が演芸会への出演を強くもとめられ、芸がないのでしかたなく下ネタに走ったという短い記事が週刊新潮に出たくらいか。
asahi.comの記事は帰国した留学生や関係者に幅広く取材したものらしく、発端となった演芸会の模様から、暴動が広がっていく様子まで、ビビッドに描きだしている。
猥褻かどうかはともかく、下品な寸劇は確かに演じていたようである。「Tシャツに赤いブラジャー姿で、背中に「日本」「♥」「中国」と書き、腰に紙コップをつけて踊った
」とあるから、本人としては日本と中国が♥しあうという、日中友好のメッセージのつもりだったのだろう。
中国の学生が生真面目だからこうした「誤解」が生まれたとばかりはいえない。中国文学には恋愛という概念は存在せず、ポルノしかなかったという有力な説がある(張競『恋の中国文明史』と岡田英弘『この厄介な国、中国』)。たび重なる異民族支配や西欧の影響で恋愛概念は徐々に広まったものの、一枚めくれば、男女関係はすべてポルノと決めつける民族性がつづいているのだとしたら、国と国の関係を男女関係になぞらえること自体が冒瀆になる。
大学当局は必死に暴徒の乱入を阻止しようとしていたようだし、警備員や教職員、警官は体を張って日本人留学生を守ってくれたようである。しかし、中国国内のメディアは日本人留学生が「猥褻な寸劇」を演じたことだけを伝え、日本人学生を標的にした暴動が起こったことは一切報道しなかったというから、公安当局の仕掛けという疑いが払拭されたわけではない。
香港の文匯報は次のように書いているという。
中国外務省はこの件で日本の外交官を呼ぶ必要はなかった。外交は民意の影響を受けるが、西安のデモは決して真の民意ではない。
中国人職員や日本人学生への暴行を伝えない中国メディアは社会の公器の役割を失った。まるで『反日』ならば、どんな暴力行為も合法化されるようだ。
11月1日の時点で出た、内陸部の不満をそらそうという政治的意図があったのではないかというSankei Webにの解説記事はかなり当たっていたようである。
asahi.comには、ハルピンで日本語を教えている岩城元氏の「「西安寸劇事件」余波」というコラムも載っている。西安事件に授業の終りに言及したところ、中国人学生から日本人批判が噴出し、岩城氏は2時間以上教壇で立ち往生したという。
時間がたってから、別のクラスで感想文を書かせたところ、良識ある文章が多かったというが、次の条はおやおやと思った。
その夜、このクラスの女の子二人が鍋料理屋でごちそうしてくれた。食べながらそれを言ったら、「先生が文章で書けと言われたから、おとなしい内容になったのです。自由にしゃべらせていただけるなら、止まりませんよ」とのこと。胸の中は張り裂けるばかりなのだろうか。
日本は、反日教育で純粋培養された何億もの隣人とつきあっていかなければならないのだ。そのことを忘れないようにしよう。
日本ラカン協会の第三回大会を聴講してきた。
今回はシンポジュウム形式ではなく、『ラカンと哲学』の著者であるアラン・ジュランヴィル氏の講演と質疑応答にしぼっていた。ジュランヴィル氏は体調がすぐれなかったということだったが、1時間半の講演、2時間の質疑応答を高密度に語りきり、会場に拍手が起こった。
講演は「実存の思索者ラカン」という題で、秘教的な内容だったが、原和之氏による試訳が配られたので、話の流れだけはどうにかついていくことができた。キルケゴールをとっかかりに、ラカンの宗教性にわけいっていくというアプローチは難解だが刺激的である。
あっと思ったのは、ラカンの四項構造とハイデッガーのDas Geviertを結びつけた条である。もっとつっこんだ話が聞きたいと思っていたところ、ハイデッガーの研究者が質問してくれたので、ラカンとハイデッガーはともにアリストテレスの四原因説を重視していた、アリストテレスを媒介にしてラカンの四項構造とハイデッガーの四方界はつながるという踏みこんだ説明を聞くことができた。
講演は「恩寵」がキーワードの一つだったが、日本の精神科医から転移とからめた質問があった。ジュランヴィル氏は自律を重視したフロイトにとって、転移は必要悪だったが、自我の他律性を知っていたラカンは転移を肯定的に考えていたと言い切った。
密度の高い質疑の一方、講演中に「選択」という言葉が出てきたのをとりあげて、サルトルの「選択」とどう違うのかなどと、馬鹿な質問をした学生がいた。
体調が悪いのをおして壇上に立っているのに、こういう幼稚な質問をぶつけられたら、誰だってムッとするだろう。質問を逐語的に訳した原氏に、ジュランヴィル氏は「ご丁寧な通訳、ありがとう」と皮肉をいっていたが、学生は頭に血がのぼったのか、第二の質問と称してわけのわからない演説を延々とつづけた。自由な雰囲気もよしあしである。
現地時間で29日午後、日本の二人の外交官がイラクのティクリート近郊で何者かによって銃撃され、死亡した(Mainichi INTERACTIVE)。各サイトに多くの記事が出ているが、Sankei Webの「血の海の中、最後のうめき 日本人外交官殺害」から引く。
360度見渡せるほど見わたしがよい現場で惨劇は起こった。
道路脇の食料品スタンド店主、ハッサン・フセインさん(42)が発砲音を聞いたのは29日午後0時半(日本時間同6時半)すぎ。「バグダッド方向から走ってきた車がスタンドの手前で右に大きくカーブを切り、路肩を外れて60メートルほど畑に鼻先を突っ込むようにして止まった。すぐ後ろから米軍の車列が通り過ぎていった」とフセインさん。
奥参事官らの黒い4輪駆動車の車体左側には無数の弾痕。「ドアを開けたら前部座席に2人、後部座席に1人が血の海の中で倒れていた。1人はまだ息があり、苦しいうめき声を上げていた。助けようと思ったが何もできず、警察を呼んだ」とフセインさんは唇をかむ。畑に残った車の轍(わだち)の脇には、生々しい血痕が残っていた。
米軍筋からは道路脇の売店で水を買おうとして襲われたという情報が流れているが、「すぐ後ろから米軍の車列が通り過ぎていった
」という証言が事実だとしたら、情報操作ということになろう。
マスコミでは背景分析がはじまっているが、神浦元彰氏のJ-R.comは基本知識として必読。首相周辺や外務省、マスコミはもとより、防衛庁内局まで軍事常識を欠いていて、誤解にもとづく誤った判断をくりかえしてきた惨状がよくわかる。左翼だけでなく、官僚もマスコミも軍事学を白眼視してきたが、そのつけがまわってきたのだ。
距離のとり方は難しいが、田中宇の国際ニュース解説も熟読する価値がある。
田中氏の発言にはいろいろな評価があるが、「イスラエル化する米軍」はすこぶる説得力がある。世界的陰謀の真偽はともかくとして、アメリカがアラブ人を占領統治し、テロリストを制圧するノウハウをイスラエルからえているという説はなるほどと思った。トルコまでイスラエルに対テロ対策を教わっているのだとしたら、イラクはパレスチナ化するしかない。
最新の「世界大戦の予感」にはもっとシビアな話が紹介されている。アメリカは南部のシーア派地域と北部のクルド人地域に自治権をあたえ、ゆくゆくはイラクを中部のスンニー派地域とこの二地域に三分割しようという案を真剣に検討しているそうである。
イラクはもともと英国が石油利権の思惑から、オスマン・トルコの三つ州を一つにまとめて建国させた国だそうで、歴史的に見れば三分割案は理にかなっているといえないことはない。
だが、と田中氏はつづける。歴史的には出自が異なるとはいえ、フセイン政権時代にスンニー派住民を南部や北部に入植させ、代わりに南部の貧しいシーア派住民をバグダッド近郊のスラム地域に強制移住させる政策が継続された結果、居住地域がモザイク状にいりくんでしまった。スンニー派地域の中部には石油が出ないために、南部と北部の油田地帯をスンニー派の支配下に置く必要があったというのだが、このまま分離させようとしたら、印パ紛争やボスニア紛争の轍を踏むことは火を見るより明らかだ。
だが、それでもアメリカは分割に踏み切るだろうと田中氏はいう。
米軍がスンニ派ゲリラを大して潰さずに出ていけば、再びスンニ派のバース党勢力がよみがえり、フセイン本人か、その一派のスンニ派の独裁者が政権を奪取し、シーア派とクルド人を無数に殺して独裁政権を打ち立てるだろう。
結局、米軍がどこまで戦い続けても、イラクが安定して平和になる可能性は低い。不安を抱えながら統一を維持するより、早めに分割を決めてしまった方が内戦になる懸念が小さい、とアメリカの外交専門家たちが考えたのは理にかなっている。そもそもこんな戦争を起こしたアメリカが悪いのだが、それを責めたところで、現実論としては何も変わらない。戦争は、歴史を後戻りできない形で動かしてしまっている。
これはもう10年、20年で解決できる問題ではないし、おそらく世界中に飛び火するだろう。ブッシュはパンドラの箱を開けてしまったのだ。